「Visitant」

京都を歩き巡った時と同じ服装に身を包む

気持ちが3週間半前に戻ってしまう

あの日と同じように 今日も雨

あの日と同じくらいの気温

あの日と同じほどの肌寒さ

目の前には白い幹の枝垂れさくら

人が行き交う渡月橋

保津川のゆったりとした流れ

山並みが庭園と一体になって見える天龍寺

そして 空に向かって伸びる竹林の道

自分が再びその場所に立っているように

春 真っ盛りだった嵯峨野の景色が見える

目を閉じて そして そっと開けると

そこにはあの時の景色が広がっている

雨の匂いや

傘にはじける雨音

人々のざわめき

もちろん 隣にいる彼の姿も


昨日から知り合いが大勢で京都を訪れている

その所為もあるのかもしれない

それを少しうらやんでいるのかもしれない

あの場所をもう一度訪れたいと

そう思っているのだろう

彼らに意識を合わせたら

それこそ戻ってこられなくなりそう…

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