1000年以上前の常識しか知らない聖剣の守り人は、今の非常識で犯罪行為を積み重ねる!

ぺよーて

第1話 聖剣の守り人はもうやめた



俺は聖剣の守り人とかいうのをやっていた。


ハハッ、もうやめたがな。



別に俺だってこんな仕事やりたくてやり始めたわけじゃあない。


聖剣の守り人時給1500zとか求人があった訳じゃあない。


この世に聖剣が作られた時に一緒に、聖剣を守り、勇者を導くものとして神に創造されたのだ。


職業選択の自由すら与えられず何千年も聖剣を守るとかいうかったるい仕事を続けてきたわけだがもうやめることにした。


聖剣を台座から引き抜いた俺は、森を出て近くの街へ向かった。


そんな広い町ではないらしい。

門番は立っているだけで特に止められなかった。

そのまま進み大通りにあった武器屋で聖剣を売却することにした。


木の扉を壊さないように力をセーフしながら開け、中に入る。

聖剣の守り人は、強力な敵から聖剣を守る性質上、基礎能力が高い。

力をセーフしなければ、いろんなものを壊してしまう。

不壊の能力を持つ聖剣は、俺の力に耐えられるシロモノだが、これを手放さなければ一生聖剣の守り人をやめられない。

聖剣を店主の前に置いた。

買取カウンターとかいてある。

多分ここで見せればいいのだろう。


「買取希望だ」


店主は、ヒゲモジャの太った男だった。

どうやらドワーフではないらしい。

身長が高いからな。


「ほう、綺麗な剣だ」


「森で拾ったんだ」

聖なる森とかいう聖剣が台座に刺さっている森でな。


「しかし、特別な力は無いようですね」


「だが、綺麗だろう。高いんじゃないか?」


そりぁ、武器屋の親父が聖剣の力を引き出せるわけじゃないだろ。当たり前だ。

適性がなきゃ使えないただ綺麗な剣止まりだろう。


「そうですね………貴族相手になら高く売れるかもしれませんね」


「売却を頼みたい」

早くそいつを手放して聖剣の守り人という仕事を辞めたいんだ。

二足三文でいいから買ってくれないかな。


「これほどのものとなれば持っていたほうがよろしいのでは?」


「いや、結構だ」


「では、780000zです」



780000zというのがどれほどの価値があるのかわからない。

だが相当高いだろう。

初代の勇者が王から魔王討伐のために貰った資金が100zだと言っていたわけだし、780000zは、勇者の貰った金額の7800倍だ。もしや国家予算に相当するのではないだろうか。


聖剣の守り人をやめた祝いに豪遊するのも悪くないな。




と思っていた頃もありました。


「はぁ!?パンが一斤800zだと!ぼったくりもいい加減にしろ!」


「い、いえいえ、そんなことするわけないではないですか」


どうなってんだ。

100zでは何も買えないではないか。

いや、あの店もぼったくりだ。


俺が見ない顔だからってなめてやがる。


パン屋も、宿屋も、レストランも、道具屋もぼったくりをしてきやがった。

薬草一枚500zってなんだ!バカにするのもいい加減にしろよ!

くそッ!


まぁいい……聖剣の守り人は人間ではなく精霊に近い体をしているんだ、食べなくても寝なくても休まなくても大丈夫だしな。


この欲に濡れた人間の街を離れ、もっとまともな場所に行こう。


腹いせに門を通らず街の壁に穴を開けて外に出た。


「風通しがよくなったな、感謝しろ」






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