第68話~解き放て、魂の形!!~
「――剣君は確かトランプが得意って言ってたな。今の構えからするとそうだな……『スピード』!君は今スピードを始めようとしている!!」
Dr.ノイマンがアナウンスで剣に暗示をかけている。
『スピード、懐かしいな!みのりと初めてゲームワールドに行った時にやったゲーム!!
もしみのりが起きてたら魅せたかったな、この構え!!!』
あの一匹狼だった頃の剣とやったスピード。仲間が出来た今でも、みのりも剣も鮮明に覚えていた。
(剣君……しっかり見てるよ。あの騎士のようなゲームさばきに惚れて、友達になりたいって――思ったんだもん!)
「剣君は今、スピードを始まるのを待ちきれない、今にも構えた先の山札を触らずにいられない!
さぁ、君の中に持つ魂の剣を振るい立たせる時が来た!!」
剣の表情に険しさが際立った。目を瞑りながらも手に力がみなぎっている!
その時、剣の利き右手が光り始めた――!!
そしてその光は………
赤く光輝く『剣』に姿を変えた!!!!
「ゲームワールドにのさばる悪を、ぶった斬るのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『うぅぅぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!』
――ズドォォォォォォォォォン!!!!!
剣の魂の叫びが密封されたカプセルの中でも物凄い衝撃音が研究室に木霊した。
そして、カプセルが開き立ち込めた煙の中から剣が半ば抜け殻のような力抜けた顔で立っていた。
「……はい、検査終わり。もうカプセルから出ても良いぞ」
Dr.ノイマンもさっきの迫力ある暗示からいつの間にか平常運転に戻った。
「な、な、何だってんだこのパワーは………すっげぇ疲れたぜ――!」
「これがPASの力だ!まだコントロール出来てはいないが、覚醒さえすれば更に強くなる!!」
槍一郎も誇らしげに話した。
「え?もしかしてまだPAS覚醒されてないの??」
「そう簡単にPASは覚醒はせんよ!覚醒には3つの条件が無いと使いこなすことは出来ない!」
「3つの条件!?」
「その3つとは『
Dr.ノイマンが伝えたPAS覚醒の条件。
『極限』とは人間の限界を越える瞬間のこと、剣の場合はまだ『
「あたしがテトリスの殿堂入りの時に、I型テトリミノが2つ同時に出たのもPASの力があるからなんだって。槍ちゃんが教えてくれたわ」とレミ。
「ワイがビッグウェーブで心・技・体の特訓をしとるのもそのPASの覚醒要素が一致しとるからなんや。ワイも見るからに覚醒まであと一歩の所まで剣は来とる」そして豪樹。
「成る程ねぇ……そう簡単には行かねぇか!!」
剣はエネルギーを使い果たし、疲れた様子で肩を落とした。
「まぁそう焦ることもない、直に覚醒するのは確かなんだから。
――ほら、さっきの検査したPASのデータだ。大会までに参考にするといい」
Dr.ノイマンは剣に発行したPASのデータの紙を渡した。
「どれどれ……?」
渡された紙にはPASの種類とプレイギアのデータから醸し出した『プレイヤーステータス』が書いていた。
【PAS検査結果】
桐山剣(16)/プレイヤーレベル:24
PAS:『ロングソード』
タイプ:アーティファクト/ウェポン
[プレイヤーステータス]
・アクション:225・シューティング:197
・ロールプレイ:215・タクティクス:231
・スピード:211・ブレイン:199
・ハート:198・ミュージック:180
・ラック:224
[プレイヤースキル]
・【エース・スラッシュ】・【精神統一】
・【エース・スティンガー】・【剣神の構え】(New!)
予選1stでの『チャンバラ・ファイター』から更にレベルアップした剣は、新しいプレイヤースキルも手に入れ、バランス良く成長していった。
「『ロングソード』か……俺のPASは
剣は自分のPASが名前通り剣である事に喜んだ。
「まだ未完全だが、このPASであることは間違いない。後は君の気持ち次第で覚醒も夢ではないぞ!」
Dr.ノイマンは期待の気持ちを込めて剣に言った。
「ノイマン先生、ありがとうございます!よーしこれであいつらを徹底的に……」
「――待って!!!」
話を遮ったのはみのりだった。
「みのり……起きてたのか?どうしたんだよ」
「私もPASを調べさせて下さい!!」
「へ!?何を急に――」
「……私戦えないけど、何か自分の事で気になっちゃって!えへへ……」
みのりは半ば無理してる感じにほのめかした。
「しょうがないな……先生、どうします?」
「――まぁ研究の糧にもなるから否定はせんよ。ただお嬢ちゃんじゃまだ覚醒まで遠いんじゃないかな……」
それでもみのりは自分のPASを見たいようだった。1つでも剣達の役に立ちたい!と思ってこそである。
みのりはカプセルに入る。そして準備をするDr.ノイマンはある事に気づいていた。
(――?これは………まさかな)
Dr.ノイマンはモニターの前でみのりに呼び込んだ。
「よし、それじゃお嬢ちゃんはゲームの事で何でも良いから想像してみなさい。
楽しい事とか興奮した事といったポジティブな想像が、PASを表現させやすくする」
そう言うとみのりは目を閉じて、瞑想を始めた。
(私は――剣君達と楽しくゲームしたい!!そして……皆の力になりたい!!!)
その時――!!
コォォォォォォォォォォォォ……!!!!
みのりの全身から暖かく眩い光が放たれ、カプセル全体、いや研究室全体に広がり……
そして静かに消えていった――!
Dr.ノイマンはカプセルを開いた後、感無量に思いに浸っていた。
「…………………不思議だ――!これは形というよりも……彼女の心、そのものがPASになろうとしているのか――!!?」
「あの……何が不思議なんですか??」
みのりも剣達もきょとんとした顔で疑問に思っていた。
「PASというのは常に正しい者にのみ与えるものではない。逆に道を踏み外し、邪道に走る者にもPASがある。
だが彼女のは善でも悪でもない、ただ透き通った純粋な心が形になっている!!」
剣達は更に「?」な顔になっていった。みのり自身も何の事かさっぱりである。
さらにDr.ノイマンの熱弁は続く。
「私には今は何も分からんが、これだけは言える。彼女のゲームに対する愛情は人一倍強い!ただ純粋にゲームを楽しむ心が彼女自身の今の力になっているのだ!
だがこの力を善か悪かを決めるのは、彼女の心次第だ……」
「――私の心次第で、剣君達を助けられるんですか……!?」
みのりはまだ自分の事がまだ分からずにいたが、今は考えている暇はない。
ただ仲間の力になりたいと思うのみであった。
「……これからのお嬢ちゃんの為に、1つ伝えておこう。お嬢ちゃんのPASの力は、剣君以上の力を持っている。
まだ覚醒には程遠いが、今後お嬢ちゃんが友達やゲーム等に対してどんな気持ちや意志を持つかで道標も大きく左右される。
――お嬢ちゃんがこの先友達の力になりたいと思うなら、目の前に起こる情勢に何が正しいのか、自分は何をすべきか、しっかり見極めて決断をしていきなさい。
もしプレイヤーとして……いや、人としての道を外したり自分を見失う事になったら、一転してその心は邪道に堕ちることになる。
――人の心というのは恐ろしい!!自分の意志1つで善にも悪にも一瞬にして変わるのだからね……」
「………………………………」
みのりは深く考え込んだ。
しかしそれが時と共に解決するわけでもなく、みのり自身の心の奥底にこの事をしまいこんだ。
そしてオールスターズはプレイヤーズ・ラボを後にした。
◇◇◇
剣が押し進むみのりを乗せた病院のベッドのキャスターがカタカタと音を立てて、オールスターズ一同は再び『プレイヤー・バザール』の街路をとぼとぼと歩く。
「……なぁみのり、そう考え込むなって!今はブラックヘロンの事を片付けないと」
「そうだ、みのりの事は後で僕達でじっくり考えればいいんだから」
「………うん」
剣や槍一郎の呼び掛けにも、ベッドで寝込むみのりは頷くだけだった。
またしても気まずい雰囲気がオールスターズに襲っている。
「………ん?ねぇ皆、あそこに誰かいるわ」
レミは薄暗いプレイヤーバザールの町並みから人の気配を察した。
「ブラックヘロンか――!?」
剣は警戒しつつもレミは確認する。
「いや、そうじゃないみたい。何か落ち込んでるような……」
「??」
剣達はその人の元に近づいた。どうやら剣と同世代の女子のようだった。
「――オイお前、こんな所で何してんだ?」
「ブラックヘロンに襲われちゃうわよ?」
剣とレミが問いかけるなか、その人は泣きそうな声で話した。
「私………そのブラックヘロンの一員でした。
でも、逃げ出してきたんです……」
「逃げ出した!!?どういう訳だ??」
剣は問い詰めると女子は急に泣き出した。
「おい、やりすぎだぞ剣」
「女の子泣かすとかサイテー!!」
「いや、違うって!!!!」
槍一郎とレミが剣にブーイングをかけるなか女子が遮る。
「お願いです皆さん………助けて下さい!!!!」
元ブラックヘロンの女子から出したSOS。それを意味するものとは一体――!?
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