神のお告げ。6


 ――無理だ。


 優しさに飢えていた。いじめにあって、両親も姉も死んで、一人で生きてくしかないと思った。そう思っていてもどうしようもなく寂しくて、寒くて仕方がなかった。それはまるで、雪山にいるかのように。そこにつけこまれた。気を許しちゃダメだと思ってても、無意識のうちに許してしまっていた。絶対後悔するに決まっているのに。俺は馬鹿なのか。他人なんて信用すんなよ。信用したところで、どうせ捨てられるだろ。それならいっそ自分から捨てろよ! 

「あああああああぁぁ!!!」

 足も頭も痛くて声を出すのすらきついくせに、無理矢理喉仏から張り上げて叫んだ。手元にあった穂稀先生がくれた本を掴み、破いた。何十ページも一気に。病院の本だとわかっても、そうせずにはいられなかった。どうせ患者に弁償しろなんて言ってこないだろう。そう思って無我夢中で破いた。良くないと思ってても、物に当たらずにはいられなかった。当たれば気が済むわけでもないのに。

 もう嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ! 

 俺が何したって言うんだよ!!

 なんで何もかも奪われる! 姉も、両親も、自分の命すらも‼ どうせ殺すなら、せめて逆にして欲しかった。俺が姉より先に死ねばよかった。それなのになんでっ!! 

 ――やめろ。希望を持つのも、どうしようもない現状を嘆くのもやめろ。お前はなんもできねぇだろ。なにかできたら苦労しないんだよ。

 いじめられた時から知ってるだろ。――神は残酷だって。残酷でなければ、俺はとっくに死んでるハズなんだよ!!

 嘆きは止まらない。どうせ手に入らないと思うのに、期待が止まらなくなってしまう。

 ――友達が欲しい。――誰かに相談したい。このやり場のない想いを。

 ――誰か助けてくれ。

 アホか。さんざん邪険にしたくせに今更助けてくれなんて、虫がいいにも程がある。助けてもらえるわけないだろ。

 お前は人殺しだろうが!

 最愛の姉を殺したんだぞ!

 助けられたら奇跡なんだよ‼

 ボロボロになった本をゴミ箱に投げ捨て、俺は泣き崩れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る