第3話 俺は台詞
俺は台詞。君、台詞って何かわかるか?劇で話すことばだったり、会話、決めゼリフに名台詞、決まり文句やお約束。中でも俺はちょっとくさいセリフだ。あーべつにニオイの方じゃないからな、わかるだろ?
俺が呼ばれるのは決まった場所が多い。音や声や曲が流れていることも多い、ミュージカルなんかで歌になるやつも中にはいる。劇場や映画館、はたまたちょっとおしゃれなレストランとか。時には下駄箱とかな。俺自身は慣れてるけど周りはそうでもない。懐かしさを感じるひともいるようだ。今じゃ俺を嫌がる奴もいるんだけどこいつは大丈夫みたいだな。
俺はただのセリフだ。呼ばれるか呼ばれないかはそのときまでわからない。悩んだ挙句に呼ばない、呼べない奴も多い。俺からはなんとも言えない。喧嘩のセリフの奴らは、アイツら喧嘩っ早くて、側でけしかけるからな。荒いし。
この間、詩って奴が俺と一緒に呼ばれたんだよ。遠回しな奴でよ、でも結局最後は俺が出るの分かってるから詩も遠慮しちまってよ。ちょっとかわいそうだった、いい奴だからもっと胸張れって言って、ああアイコンタクトした。
そうそう、煽り文句のやつと呼ばれたこともあったな。いいムードで俺が登場してすぐわらわらとそいつらと商品が出てきてなあ。アイツらはひどいなあ、ありゃ詐欺だろ。俺はなんとも言えないけど。ん、俺も利用されたってことか?そりゃちょっと納得いかないな。今も昔も変わらず呼ばれる俺が利用されるなんて。焼きが回ったかな。
俺もいつかはお声がかからなくなるかもしれない。時代の流れは速いから、古くさいセリフ回しはいつか消えるだろう。だからこそいいんだと思うんだが。喧嘩のセリフも煽り文句も詩も、俺みたいな歯の浮くようなセリフも、いろんな奴がいていいんだ。
君はどう思う?
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