ケーキとショットガン

朝、学校に到着し教室に入り込む。

スカスカの通学カバンを机の横に置き、黒板の上の掛け時計に目をやる。

まだ少しHRまでの時間がある。

特にする事もないな。

寝るかと昼寝用の机に手を置きそこに顔をうずくめようとした時であった。


「ジングルベル、ジングルベル鈴がなるー。……ところでこれの歌詞の続きなんだ?」

「これは日本語に訳した歌だからな。何個か歌詞があるんだ。それを丁寧に説明してやる」

「突っ込みじゃなくマジレスが来た!え、怖い……」


朝から、いや朝も元気な星丸と横には光が居た。

何故毎日俺の机に集まるんだ?

横とか後ろの子とか迷惑そうにしていたりするのだが、基本星丸か光の友達なので俺にだけその表情を見せる。

しかし授業の時横とか後ろの子がガヤガヤしていると俺が迷惑なので申し訳ないとは思わない様にしている。


「明日から冬休みだしさ、毎年この時期恒例達裄の家でパーティーしようよ」

「もうそんな時期だってよ達裄、去年は一緒にわんこそば対決したよな」

「そんなんしたか?」


何故クリスマスの時期にわんこそばをしたのか去年の記憶も曖昧で風前の灯の出来事である。

つーか何やってんだよ去年の受験生。


「でも俺明日から家庭教師やるんだよな」

「お前またあれすんのかよ……」

「私と星丸のトラウマが蘇る……」

「言っとくが俺もトラウマになってるからな」

「しかも飴とムチの使い道が正しくてなぁ」

「飴とムチってよりケーキとショットガンみたいな感じ」


3人揃って「はぁ」と溜め息を合唱させた。

いや、相手は流亜だ。

このバカ2人よりはマシな筈だ。


「まあ初日だから軽く済ませるけどさ、俺の家かぁ……」


恋の事をいまだに話せていない。

今までは集まるなら1人暮らしの俺の家って事になるのが多かった。

というか勝手に来るって感じなのだが。


「最近付き合い悪いぞ達裄!」

「どうせ暇でしょ」

「…………今さ、俺の家に女神アイドルがいるからさ家に上げ辛いんだよな」

「達裄が妄想の世界へ行ってしまった!」

「あんたがオタクな世界に引き込むからでしょうが!見ろよ、あの嘘と真実の狭間のドヤ顔!」

「光、お前のポロリで達裄の目を覚まさせるんや!」

「無理、星丸のポロリで頑張りなさいよ」


いちいちうるさい奴らだ。

何故光のポロリが見たかったのに星丸のポロリになってやがる。

誰得だよ。


「じゃあ俺のポロリで我慢な」

「妥協するな。制服どころが皮膚を剥ぐぞ」


星丸よ、何故顔を赤くした……。


もう良いと俺の方が妥協をした。

恋の話では来年ここを受験するようであったしどうせいずれみんなにばれる事だ。

それが今か後かという時間の問題だ。

13時半頃から、そういう事にしておいた。


「よし、雨と影太誘うか」

「何故影太?」


別に趣味な話に行かないなら普通に良い奴なのだが。

……ちょっと待て、恋やばくないか?

あいつ近所の小学校とかたまに中学校とか行って可愛い子探しとか行ってんだぞ。

恋とかドストライクなんじゃねーのか!?

恋は俺が魔の手から守ってやらないと。

因みに雨は親と過ごすらしく欠席と知るのは10分後。


「……なんか達裄が影太の名前出てから様子が変なんだけど?」

「いつもだよ」


明日の予定が決まってしまった朝。

寝て起きての繰り返しで冬休み前最後の授業が終わり、チャイムが校内中を鳴らした。

その音と共に疲れ切った顔の生徒は急に生き生きとした顔になり活気が良くなった。


「というわけでさぁ帰るか星丸に遠野」

「何故影太?」

「今日は影太がサッカー部が休みだからどうしても男3人でって」


むさいやろ。

光も雨も居ないで俺と星丸と影太の3人で寄り道しながらの帰宅になっていた。

わけがわからない。

帰りが遅くなりそうだが恋が1人でも準備すると信頼しているので問題はないとは思う。

しかし3人で何をするのか?

脱衣麻雀とかなら全力で逃げ出すが。


「んでさ何すんの?脱衣麻雀なら1人足らなくね?」

「なんで脱衣麻雀すんだよ!遠野お前したいのかよ!」

「いや、したくねーよ。しかも俺麻雀で勝つのも負けるのも嫌だから引き分けに持ってくよ」

「どっかで聞いた設定……」


どうやら違うらしい。

安心した。

これ並みに全力で逃げ出す事もそうは無いだろう。

さて何をするのか。


「自分で言うのもなんだがみんな顔だけは良い3人」


うぜぇ、殴りたい、というか埋めたい。

そんな感想がニコニコ顔の影太に対して浮かんだが暇つぶしになればいいとそのまま頷いた。


「それなら決まってるな!ナンパさ!」


よし全力で帰るか。

星丸もカバンを持って帰る気満々だった。


「ちょっと待ってくださいよ星丸君、達裄君」

「お前が達裄って呼ぶな」

「達裄を名前で呼んで良い男は俺だけさ」

「星丸はしばらく俺に話掛けてこないでください」


星丸と光コンビも相当だが、星丸と影太コンビも相当うざい。

もうやだ、影太曰く『顔だけはだけは良い3人』グループ。

解散したい。

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