第13話〜冷静に選択を
…………。
…………。
ーーーグギャガ⁉︎
胸のど真ん中にナイフを刺されたボブゴブリンが断末魔の叫びと共に崩れ落ちた。
ーーーギャェ……
そして同じタイミングで首から血を吹き出していたコボルトも力尽きる。
…………。
戦いが始まってから何分経っただろう?
ボブゴブリンの死体があった場所に転がったナイフを素早く拾い、バックステップで距離を取る。
床にはビー玉ほどの小石と、それよりやや小さな小石が転がっている。
もう何十分も経ってる気がするが、おそらくまだ10分弱といったところだろう。
コボルトに噛まれた痕がズキン、ズキンと鼓動に合わせて痛む。
あれからコボルト1匹を始末して、隙をみてダークシャドウも倒すことができた。
今残りのコボルトとボブゴブリンを倒すことができたので、あとはボブゴブリンとダークシャドウの一体ずつ。
通常ならば何の問題もない。
けれど予想以上に体が限界に近い。
ボブゴブリンに殴られた胸部は肋骨が折れているのか、呼吸するたびにズキズキと痛みが走る。
噛まれた足は一歩毎に痛みが増しているようだ。
他にも腕や胴体にはダークシャドウの鋭い爪で引っ掻かれた傷跡がいくつもあり、ジュクジュクと熱を持った痛みと共に少しずつだが出血している。
…………。
クールになれ。
今は痛みなんか気にするな。
あとはたったの二体だけだ。
そう頭の中では思っていても痛みは無くならないし、出血と怪我で呼吸は浅く速く、息苦しくなってきた。
頭はボーッとするし、若干だが目の前がボヤけてきたかもしれない。
これはマズイ。
必死に息を整えつつ、自分の体の状態を冷静に把握してみるが、気分が滅入るだけだった。
「…………。」
今はコボルトたちを倒されたことでこちらの様子を窺っているが、すぐにでも襲いかかってきそうだ。
無理な使い方をしたせいでナイフは切っ先が折れてしまっている。
血や油で斬れ味が落ちてしまうかと思えば、死体が消えるのと同時に血や油も消えてしまったのは僥倖だった。
…………。
1、まずダークシャドウを倒す。
2、まずボブゴブリンを倒す。
3、二体同時撃破を狙う。
4、応急処置をする。
5、距離をとって様子を見る。
6、諦めて楽になる。
…………。
駄目だ、考えがまとまらない。
無駄な選択肢がいくつも浮かんでくる。
クールになれ!
少なくとも二体同時に戦うのはキツい。
どちらかを先に倒さないといけない。
今はつかの間のにらみ合い状態だ。
きっかけがあれば即座に、何もなくてもほんの数秒で状況は動く。
手当てをしている暇はない。
距離をとったところで追いかけっこが始まるだけだ。
諦めて楽になる?
¨次¨があるか?
少なくとも大怪我をした状態からのスタートだし、殺されない保証も無い。
…………。
追い込まれたことで思考が加速して行くのを感じる。
ほんの数秒が長い。
今取るべき選択肢。
そんなの冷静に考えれば分かるじゃないか。
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