第7話 水族館に出発と意外な話

リタとセリアさんと共に水族館へ前日に姉さんが家にやって来て、デートスポットとか服装とかを伝えて来た。

いや、デートじゃないんだけど。 と姉さんに言ったら、 それじゃあ嫌われちゃうわよ! と言われてしまった。いや、嫌われるって、俺はセリアさんの彼氏じゃないんだからあり得ないでしょ。 そんなこんなで準備していたら当日になってしまった。


「ハァ〜、行く前なのに憂鬱」


「何でなの?」


「姉さんを見てみろよ!」


とってもキラキラした目で、俺を見つめて来ているじゃないかぁ!?


「とても期待に満ちた顔をしているね!」


「違うっ! 何か企んでいるときの顔があの顔なんだよ!」


「イヤねぇ〜、何も企んではないわよぉ!」


小学生の頃に俺の食べていたケーキを見て、 一口ちょうだい。 と言われたのであげたら、ケーキの6割が消えた。またある日は、あの笑顔で それ貸してちょうだい。 と言われたオモチャを貸したら何処かに消えて行ってしまった。

更に中学校の頃にあの笑顔で 一緒に来てちょうだい。 と言われたので付いて行ったら、姉さんの友人に付き纏っていたストーカーとファイトするハメになった。だから・・・・・・。


「その笑顔がとても恐いんだ」


「安心しなさい。私はもう大人何だから、自分の事は自分で何とかするわよ」


その言葉を信じていいのだろうか?


「ねぇ、それよりもそろそろ時間じゃないの?」


リタがそう言うので時計を確認して見ると、8時50分になっていた。


「ここに来るのは5分後ぐらいじゃないか?」


「3分後だと思うわよ」


そんなやり取りしていると、 ピンポーンッ!? とインターフォンが鳴り響いて来た。


「あ、はぁ〜い!」


姉さんそう言いながらドアホンで確認する。


「あ、どぉ〜もぉ〜コハルさぁ〜ん。セリアさんを連れて来ましたよぉ〜!」


「あ、はい! わかりましたぁ!」


姉さんはそう言うと、俺のところまでやって来た。


「セリアちゃん来たわよ。チケット持った?」


「ああ、ここにあるぞ」


そう言って肩がけ鞄からペアチケット取り出して見せた。


「お金は?」


「多目に持ったから大丈夫」


何時もは1万円以内だったけど、今回は5万円を持って行け。と言われたので5万円財布に入れた。


「ハンカチとティッシュは?」


「持ったよ。て言うか姉さんは俺のオカンか!?」


「アンタの姉よ!」


そんなやり取りをしながら、玄関の方へと向かう。


「あ、そうだリタ。玄関開けるから【透過】使って」


「了解! 【透過】」


リタの姿が半透明になり、俺の周りを飛び回っている。


「リタちゃんは何処にいるの」


「俺の右肩ら辺で飛んでいる」


「リタちゃん、なるべく洸夜と離れないようにね」


姉さんはリタの返事を待たずにそのまま玄関を開けたら、セリアさんが驚いたのかビクッと身体を強張らせた。


「お、おはようコウヤくん!」


「おはよう、セリアさん」


「キョ、キョウモ イイテンキデスネ。ワァー、スイゾクカン タノシミ ダナァー」


小学校低学年の演劇か! と言いたくなるぐらいの棒読みでそう言って来た。


「そ、そうなの?」


「ハイ、タノシミ二 シテイマシタ」


まるでアニメに出て来るロボットのような話し方をするので、正直言って不安になってしまう。


「セリアさん、そう緊張せずにぃ〜、リラックスゥ〜、リラックスゥ〜!」


「ワタシ ヘイキ ダイジョウブ」


「大丈夫じゃなさそう!」


このまま水族館に行って大丈夫かなぁ? 思っていたら、姉さんがセリアさんの身体を抱きしめた。


「ムグッ!?」


「よしよし。可愛い子めぇ〜!」


「ムグ、ムグググッ!?」


セリアさんが姉さんの胸の中で苦しそうに踠いていると、パッと離したのだ。


「何をするのですかぁ!?」


「緊張をほぐしてあげたのよ。もう平気でしょ?」


「え、あ、はぁ・・・・・・あっ!?」


片言になっていたのを自覚していたのかは知らないけど、普通の会話になっているのでよかったと思う。


「それよりもセリアさん」


姉さんはセリアさんの耳元で何かを言うと、また顔を真っ赤にさせた。


「私は、まだコウヤくんとぉ〜・・・・・・」


「姉さん、セリアさんに何を言ったんだ?」


「女の子同士の内緒話よ。さぁ、時間も勿体無いから行きましょう!」


姉さんはそう言うと、車の運転席に乗った。


「あれ? 姉さん送ってくれるの?」


「ええ、送り迎えしてあげる。あ、先に言っておくけど、帰りは L◯NEか電話してね」


「わかった。セリアさん。車に乗ろう」


「あ、うん」


俺はそう言うと後部座席を開きセリアを乗せてドア閉めた瞬間、姉さんが後ろを向いて来たのだ!


「ちょっと、コウヤも後部座席の乗りなさい!」


「何で?」


「セリアさんが、不安に思うじゃないの! それにシートベルトの使い方も知らないでしょう?」


確かにそうだ。セリアさんがちょっと不安そうな顔で俺を見つめて来ている。


「わかった。俺も後部座席に乗るよ」


「それでよろしい」


反対側に回ってセリアさんの隣に座ったら、不安そうな顔から一変して笑顔でこちらを見つめていた。何故なんだ?


「とりあえずシートベルトを閉めようか」


「シートベルト?」


「ここにあるベルトのこと。これを引っ張るとベルトが伸びてここに付ければ終わりっと」


「へぇ〜・・・・・・」


やって見せたら、すぐに同じようにシートベルトを閉めた。


「姉さん。出発していいよ」


「それじゃあ出発! 行って来ます!」


「気を付けて行ってらっしゃぁ〜い」


ティアラ様が手を振って俺達を見送っている中、セリアさんが俺の腕にしがみ付いて来た。


「動いてる! これ動いてるよ!?」


「驚いた?」


そう聞くがセリアさんは恐いのか、何も答えてくれない。


『相変わらず早いし便利だねぇ〜』


リアの場合は何度か乗っているから慣れている。


「そういえば洸夜、あの話をもう聞いた?」


「あの話って何の話だ?」


「天坐学園が企業に買収されたこと」


「何だって!?」


買収されてたなんて、知らなかった。


「買収、ってことは誰かが洸夜さんが通っていた学校を、買い取ったってことですか?」


セリアさんは怯えてながらも、姉さんに聞いた。


「そうよ。あそこは県や何かが建てた学校じゃないからね。買収出来るのよ」


「でも、それだけじゃ買収出来ないだろう?」


「それがそうでもないのよねぇ〜」


「どういうこと?」


信号で停止したところで姉さんは音楽を流し始めた。


「テスト摺り替え事件以降、天坐学園の知名度が落に落ちまくったわ。色んな人達が見放すほどにね」


「その言い方じゃそれだけが原因じゃないだろ、姉さん?」


「流石我が弟。わかっているわねぇ! 他にも学園への誹謗中傷はもちろん、在校生から転校の要望が後を絶たない状況になって、授業を再開出来る状況じゃなくなっているみたいなの。

聞いた話じゃ、学園に脅迫文まで送られて来たみたいなの」


「「『うわぁ〜・・・・・・』」」


全部あのハゲ校長が起こしたことなのに、学園がこうなってしまうとは。


「何か可哀想」


「可哀想って思っても仕方ないわよ。例えあのハゲが個人的に犯した犯罪だったとしても、学校中で起きた不正行為と犯罪なのだから、自然とこうなるわ」


『それと、買収の話に何の関係があるの?』


そうだよ、疑問に思うのはそこだよ。てか、他の人にも話せるようになったんだ。


「おっとそうだった。リタちゃん、天坐学園を買収したところが意外なところなのよ!」


『何処なの?』


「何と、お父さんの会社が天坐学園を買収しましたぁ!」


「『何だって!?』」


世界的に有名なIT会社が天坐学園を買収・・・・・・。


「そのお陰で誹謗中傷がなくなったのはもちろん、転校を要望していた生徒がいなくなったわ!」


「そうなのかぁ」


「お母さんから聞いた話なんだけど今よりもワンランク上の学業を教えて、いずれは校舎も建て替えるらしいわ」


「ふ〜ん、そうなのかぁ」


世界的に有名な会社だからな。今よりも充実した学園生活をさせてくれると思う。後、あのダサイジャージも変えてくれる筈。


「っとそろそろ水族館に着くわ。降りる準備をしてね」


「「『はぁ〜い』」」


窓の外に顔を向けて見ると、水族館の案内看板が目に映ったのだった。

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