第2章 第1話 その封筒の中身は何?

あの駄爆失踪事件から約20日。学校側から謝罪されて警察や記者に質問攻めにされてと何だかんだ色々あった。

駄爆 無蔵は未だに行方不明のままだが、その息子の駄爆 無乃は不正入学が発覚して上に中学時代の悪事が全てバレたので天坐学園を退学となったのと同時に、少年院へとドナドナされる事となった。


「何か一悶着あると思っていたけど、すんなり裁判なく終わっちゃったね」


「それはそうよ。裁判だって費用が掛かるんだし、何よりも負けたら裁判費用の一部を負担しなきゃいけないんだから、やるわけないでしょ」


「ああ〜・・・・・・負け戦はやらないって感じ?」


「そういう事よ」


だからみんな示談にしようとするのかぁ。


『ねぇコウヤ、あの2人はこれからどうなるの?』


「あの2人って、もしかして金刈と納錦のことか?」


『うん!』


そう、金刈の方は賄賂を受け取った上に答案のすり替えを手伝った事実が発覚して、逮捕こそ免れたものの教員免許剥奪の上に無職&借金地獄へと逆戻りしてしまった。

納錦については退院を機に、脱税と教員免許を持たずに指導していた罪により逮捕されて塀の向こうへと行ってしまった。


「ああ〜、あの2人はロクな人生を歩まないだろうなぁ」


ニュースで取り上げられたから、しばらくの間は表に出れないだろうなぁ。特に納錦の方は。


「それと洸夜、あの青年達の話を聞いて来たわよ」


『え、ホント? 聞かせて聞かせて!』


「リタ落ち着け、飛び回ってると誰かとぶつかるぞ」


実は現在姉さんに 話があるからファミレスに来い。と言われたので、このファミレスにやって来ているのだ。


『ええ〜、私達の周りに誰もいないからいいじゃん! それにコウヤ達以外には私の姿が見えてもないし、聞こえてもないし』


「そりゃそうだがぁ〜・・・・・・」


『なら構わないでしょ?』


いや、店員さんの視線が痛いんだよ。ホント。


「話の続きをしてもいいかしら?」


「はぁ〜・・・・・・どうぞ」


「洸夜を襲った青年達は逮捕、起訴を受けて塀の向こうにお世話になっているわ」


「えっ!? 無乃と同じ少年院じゃなくて?」


18歳超えていたのか?


「ええ、今回のケースは悪質で殺人性をおびていたってこと、それに加えて一番低くて19歳だったから、少年法は適用されなかったの。彼らの親も庇う気がないみたいでね。10年お世話になるの確定みたいよ」


「14歳なら、もっと短い刑期だっただろうな」


「そうね」


あんだけ派手にやってしまったんだから仕方ないだろうな。

てかセキュリティードアの修理費はどうすんだろうな。もしかして親が負担したか?


「それとあの4人m自分達が捨て駒だったを知らされたときにこう言ってたわ。 駄爆に騙されたぁ! ってね」


「そうか。可哀想だという感情が湧いて来ないな」


「私もよ」


『あ、私も!』


ちょっと考えれば気付くことだったろうになぁ。


「そしてここからが本題。ほとんど示談で済ませたけど、アナタは多額のお金を手に入れたわ」


「へぇ〜、いくらぐらい?」


「ここでは言えないわ。でもお母さん達が管理しているのだけ把握して」


「わかった」


家に帰ったらいくらぐらいになったのか、聞いてみようかな?


「それと、これ」


「ん?」


俺宛の封筒?


「この間取材をしたテレビ局からのお礼の品よ」


「開けてもいいか?」


「もちろん」


封筒を開いて中身を取り出して見ると、感謝状とチケットらしき紙が入っていた。


「これは・・・・・・水族館のペアチケット?」


「そうよ」


「えっとぉ・・・・・・何でこんな物を俺に?」


そう言った瞬間、姉さんが睨みを効かせて顔を近づけて来た。


「洸夜本気で言ってる?」


『あ、え? もしかしてリタと一緒に行けってこと?』


「違うわよ! っていうか、リタちゃんと一緒に行くのならペアチケットなんて要らないでしょ!」


確かにそうだけどさぁ。


『コウヤはホント鈍いねぇ〜』


「え?」


『私じゃなくてセリアを連れて行ってあげて。ってコハルは言ってるのぉ!』


「えっ!? セリアさんを?」


俺が驚いていると、リタはヤレヤレと言いたそうに呆れている。


『セリアにはお世話になっているんだから、何かの形でお返ししなきゃダメだよ!』


「確かにお返ししないといけないな。って思っていたけど、いきなり水族館はハードル高くないか?」


『スイゾクカンってところはわからないけど、楽しいところなんでしょ?』


「そこから説明しないとダメそうかぁ〜・・・・・・」


どう説明しようか? 頭を抱えていると、姉さんが頭をチョップして来た。


「とにかく、その子を連れて行ってらっしゃい! はいこれ。お父さん達から預かっていた軍資金。お父さん達も賛同してるんだから、裏切っちゃダメよ! 後は自分で頼んだ物は自分で払いなさいよ! 私、奢らないからねっ!!」


黒く塗り潰された横に洸夜のお小遣い♡と書かれた封筒を無理矢理渡されて、逃げ場を失ってしまった。一体最初は何て書いてあったのだろうか?


「あ、うん・・・・・・わかったよ」


と言った次の日の朝。


「行く! 絶対に行きますっ!!」


彼女は驚くほどに迫って来た。


「そ、そう。でも、待ち合わせをどうしようか?」


「待ち合わせ?」


「ほら、転移の使用はここ以外安全とは言えないからさ」


「あっ!?」


だから俺がこの世界に来てから、セリアさんをお迎えしようか? と言おうとしたら、ポンッと肩を掴まれた。


「それでしたら、私達にお任せくださぁ〜い!」


「ティアラ様!?」


「ワシらが彼女をお主の家に連れて行けば大丈夫じゃろう。無論帰りも同じ感じでな」


「ゼウス様まで!」


いつの間にいたんだ?


「たった今来たんじゃ」


しかも心も読まれたぁ!


「でもゼウス様、神様達がセリアさんの家に行っても大丈夫なんですか?」


「ああ、セリア殿にバレた次の日にお主のことを話しているから大丈夫じゃ」


「そのことを俺に言って下さいよ!」


「因みに私がセリアさんのご両親に話しましたよぉ〜」


だからあれだけ理解力があったのかっ!?


「じゃっ、じゃあ。明後日、朝の9時にセリアさんを俺の玄関の前にお願い出来ますか? てか、セリアさん大丈夫?」


明後日は休日なのでその日にしたが、その日がダメなら来週になってしまう。


「私は明後日平気だよ」


よかった。セリアさんの予定空いていて。


「明後日朝の9時ですねぇ〜。OKですよぉ〜」


「ワシらに任せるのじゃ」


何て頼もしいんだろう。と思っていたら、ティアラ様がセリアの耳元で何かを呟いたら、セリアが顔を真っ赤ににさせた。


「ティアラ様、何を吹き込んだんですか?」


「秘密ですよぉ〜」


女神様はそう言うと、ゼウス様と共に消えて行った。


何か気になるなぁ〜。


「セリアさん、ティアラ様に何を言われたんだ?」


「何でもないですよ! ホント、何にもないです!」


「んん?」


何かようすがおかしいぞ。


「本当に・・・・・・」


「な・ん・で・も・ないですっ!!」


「あ、はい」


ものスゴイ剣幕で言って来るので、後退りしてしまった。


「コウヤの鈍ちん」


「何か言ったか?」


「何も言ってないよぉ〜!」


そう言って飛び回るリタを目で追っていると、袋を抱えたアニス学園長が戻って来た。


「すまないコウヤくん、待たせてしまって」


「仕事なら仕方ないですよ。例の件ですよね?」


「ああ、ようやく完成したんだ。見てくれ」


そう言ってから、机にジャージを広げて見せた。


「おお〜!」


白をメインに黒と赤のラインが入ったデザインを採用している。


「コウヤが持ってたのよりカッコイイ!」


「そうだろう!」


確かに、これなら悪くはないと思うのだが・・・・・・。


「これだと汚れが目立つんじゃないんですか?」


「あ、確かに。コウヤくんの言う通りかも」


「対魔法防御と共に防汚の魔法を掛けているから、その辺は安心してくれ」


それなら汚れることを心配しなくてもいいか。それともう一つ、個人的に心配していることがある。


「アニス学園長」


「ん、何だいコウヤくん?」


「ジャージの着用についての校則も、作った方がいいんじゃないんですか?」


「そっちについても心配しなくていい。もう校則は作ってあるからな」


なら心配しなくてもいいか。


「このジャージを卒業式で発表するつもりだ」


ほぉ〜、そっちの方が宣伝になると踏んだか。


「私も1着買おうかな?」


「上下セットで4300ルアだ」


「や、安いっ! 制服で12800ルアだったのに!」


うん、価値観がわからない。


「安く買えるをコンセプト作ったジャージだから、この料金なんだ」


「買います!」


「よし、じゃあこの予約表に名前を書いてくれ」


セリアさんが予約表を受け取って書いている姿を見て、俺もそうしようとしたら、アニス学園長に お前の分は私が出す。 と言われてしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る