第16話 二日酔い用の薬の意味は?

「う、うぅ〜ん・・・・・・」


スマホ流れるアラーム音を消してからベッドから起き上がり、大きく背伸びをした。


昨日は夢を見なかったなぁ。もしかして、本当に偶発的に起きる現象なのか、それとも俺の周りで何か起こらないと見れないのか・・・・・・ダメだ。今の段階で考えても、答えが出そうにない。

でも何とかしなきゃいけない能力じゃないし、しばらくようす見しようか。


「お、おはよう。コウヤ・・・・・・うぷっ!?」


入って来てリタは二日酔いになっているせいなのか、顔色を悪くしてフラフラと飛んでいる。


「おはよう、リタ。調子悪そうだけど大丈夫か?」


「キュアを掛ければ治るから、ちょっと待ってて。【キュア】」


自分に魔法を掛けた途端、すぐに顔色がよくなりフラフラした飛び方をしなくなった。


「フゥ〜・・・・・・気持ち悪かったぁ」


「その魔法がこっちの世界で普及したら、二日酔いの薬がなくなりそうな気がする」


「私達の世界でも二日酔い用の薬は普通に売られているよ。でも、気休め程度の効果しかないから余り普及してないけど」


こっちもそんな感じじゃなかったっけ?


「それよりも、その箱に入っている物は何なの?」


リタはダンボールに近づき、中身を興味深々に覗いていた。


「ああ、それ。中身は全部武器なんだ」


「武器っ!? このヘンテコなのが?」


中にあったヌンチャクを取り出して言って来た。


「そう、武器。リタが持っているのはヌンチャクとって言う、ちょっと扱いが難しい武器なんだ」


「フゥ〜ン、これがねぇ〜」


何か信じられないような顔をしているな。実際使っているところを見せてあげたいけど、家の中じゃ狭くて無理だ。


「コウヤぁー! もう起きてるのぉ?」


あ、母さんが呼んでる。


ドアの向こうへ顔を出してから、廊下に向かって大声で話し掛ける。


「起きてるよ!」


「そう、リタちゃんも起こして来てねぇ!」


「もう起きてるから大丈夫!」


母さんにそう言ってから、自室に戻った。


「ま、武器の使い方は武術の授業でやって見せるから、そのときまでに楽しみにしていてくれ」


「わかったぁ!」


「それと服を着替えるから、先にリビングに行ってくれないか?」


「はぁ〜い!」


リタが廊下へと出て行ったのを確認すると、普段着へと着替えてから俺もリビングへと向かう。


「おはよう」


「おはよう、洸夜」


『おはよう』


こうして両親と朝食を取るのは、年末以来だなぁ。 と思いながら椅子に座った。


「頂きます。ってそういえば、お父さん達は今日どうするの?」


帰国して学校へ抗議したり、弁護士と相談する。とまでは聞いたけど詳しい話はまだ聞いてない。


「午前中にPTAの役員の人達と話し合って、午後からお父さんの会社が紹介してくれた弁護士と相談する予定よ」


じゃあそのときに証拠も貰う形になるのか?


『腕利きの弁護士だから安心して。って言われたよ』


「そうなんだ」


でも、あのハゲ校長も横領した金で優秀な弁護士を雇うんじゃないか? まぁ、状況的に不利なのは一目瞭然だけど。


「ああそうだ。学園長に今回の件に関して取材を受けるから、明後日の午前中は取材を受けるから行けない。って伝えないと」


「あっ! そうだったわね! そのときに千春も同席するみたいよ」


「あ、姉さんも同席するんだ」


まぁ言ってみれば姉さんも家族であり、仕事を中断して帰って来た被害者でもあるな。


「千春から伝言よ。”インタビューを受ける子は、全員制服を着て学生証を忘れないでね。”ってね」


「ああわかった。真吾達に今伝える」


ポケットからスマホを取り出して、母さんが言っていた通りに真吾に◯INEを送ると、すぐに わかった。他の人には俺から伝える。 と来た。いつもながら返答早っ!?


「ふぁ〜、このトマト水々しくておいしい〜」


「トマトはトマトでも、リタちゃんが食べてるのはプチトマトって言うのよ」


「そうなんだぁ〜」


幸せそうに食べるリタを微笑ましく思いながら、食事を済ませる。


「さてと、まだ7時半で時間があるからなぁ・・・・・・ニュースでも見てみるか。父さん、リモコンを頂戴」


「・・・・・・」


ボソボソ言っていてわからないが、多分 うん、わかった。 言ったんだろうな。だってリモコンを俺に差し出しているんだもん。


テレビを点けてソファーに座ったら、リタが興味深々で俺のところへやって来た。


「ねぇねぇ、これもスマホなの?」


「ああ〜、これはスマホじゃないんだ。テレビっていう道具なんだ」


「テレビ?」


どう説明をしようかなぁ〜・・・・・・。


「これもスマホと似ていて、色んな情報を見れるんだ。娯楽もこれに流れる。で、俺は今この国で何が起ったのか知りたいから、ニュース番組ってのを観ようとしているんだ」


「ほぉ〜」


わかっているのかいないのか知らないけど、俺はテレビに目をやりニュース番組を観始める。


スポーツのニュースに、国会の話題に何処で事故が起きたのかニュースだけかぁ。


「今起きている天坐学園の事件については取り上げてないな」


『それはそうだよ。ニュース番組は嘘の情報を流してはいけない法律があるから、知っていても流せないんだよ』


「そうなの?」


俺がそう言ったら、父さんはコクリと頷いた。


『それと、時間大丈夫?』


父さんがそう言うので、テレビ画面の左端に映っている時間を見てみると8時20分になっていた。


「あ、そろそろ行かないと。教えてくれてありがとう、父さん」


父さんは嬉しいのか、頬をちょっとだけ赤く染めた。


「リタ、そろそろ行こうか」


「う〜ん、もうちょっと観たかったけど仕方ないかぁ〜」


日本語わからないのに楽しめていたのか? 後で聞いてみよう。


「帰って来たら、また観ればいいじゃん」


「あ、そっか。ここに来れば観れるのよね」


元気になってくれるのはいいけど、テレビの見過ぎはよくないと後で言った方がいいか? あ、そうだ。


「今回は玄関じゃなく、自室で転移しようと思っているんだけど、どう?」


「どうって、どうして自室でやるの?」


「ホラ、昨日さぁ。転移したらセリアさんを押し倒しちゃったじゃん」


あのパンツ丸出しになった姿を思い出すと、顔が・・・・・・思い出すな俺っ!?


「だ、だからここに帰って来たら、誰かを突き飛ばしていたなんて最悪じゃん。しかもそれが家族以外の人だったらと考えると、どう思う?」


「最悪な場面しか思えないね」


「だろう。だから自室で転移をする。いい?」


「そうだね。今後はそうしよう!」


リタに説明も済んだので、自分の靴を持って自室へと入ると、武器の入ったダンボールの中に俺と姉さんの体操着とジャージを入れて閉めた後に靴を乗せて手の方で触れ、立て掛けていた棒を余った方の手で持つ。


「リタ、肩に乗って」


「ハァ〜イ」


リタが俺の肩に乗ったのを確認したら、目を瞑った。


「【転移】」


そう言った瞬間、 キャアッ!? と驚いた声が聞こえた。


「おはようございます。アニス学園長」


「ああ、おはようコウヤくん、リタ」


昨日と違ってニコニコした顔でいるので、やらかしてはないことを確信するが・・・・・・。


「あっ!?」


どうやら、セリアさんの方が尻もちを着いていた。


「セリアさん大丈夫? もしかして俺また押し倒しちゃった?」


しかもパンツが見えそうで見えない。


「ううん、平気。コウヤくんがいきなり目の前に現れたから、ちょっとビックリしただけ」


「そ、そうなんだぁ〜」


俺はそう言いながら、セリアさんに手を差し伸べて起こすのを手伝う。


「あ、これ。洗ってある方のジャージを持って来ましたよ」


自分の靴を履いてからダンボールの蓋を開き、ジャージを取り出してアニス学園長に手渡す。


「おお、ありがとう」


「それとこれ。運動用の服の体操着の方なんですけど、要りませんか?」


アニス先生に向かって体操着を広げて見せた。


「これがジャージと同じウンドウギ?」


アニス学園長は眉を潜めて体操着を見つめる。


「・・・・・・無理だな」


「デザイン的にそっちの方は使えそうにないな。せっかく持って来てくれたところすまないが、それは採用出来ない」


「そうですか。わかりました。でも、ジャージのデザインの方は期待してますよ!」


またダサいのを着たくないから。


「ああ、少なくともこれよりデザインをよくするつもりだから、期待していてくれ。さぁ、教室へと向かおう」


アニス学園長達と楽しく話ながら教室へと向かうのであった。


「・・・・・・あの子、誰だろう?」


小さな少女が後を追いかけ来るのにも気づかずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る