第10話 いざ、学園・・・・・・えっ!?
「ん、んん・・・・・・」
スマホのアラームを止めて、身体を起こす。
「今のは? 夢なんだよな?」
でも、夢にしては妙にリアルだった気がする。 と思っていたら、リタが目の前に出て来た。
「おはよう、ってどうしたのよ?」
「いや、そのぉ・・・・・・妙な夢を見てた」
「妙な夢?」
「ああ、うん。前に話した校長とその息子が、例のテストのすり替えでケンカをしていた」
リタは夢の話しに興味を持ったのか、顔の前まで来た。
「フゥ〜ン、で?」
「言い争いをした後に、息子の方がどっかに行って、校長の方がが動揺しながらソファーに座って煙草を吸っていたな」
「なるほどね」
リタはそう言うと目を瞑ってから、ゆっくりと開くのだが目の色が明かに変わっていた。
「ん〜〜〜・・・・・・ん? 変わったところはなさそう」
「えぇ〜、ないの? 例えばさ、実はユニークスキルが2つありました的なことが」
「ない」
即答された。
「そもそもユニークスキルってのは1つしか得られないのよ。2つも持っている人なんて聞いたことないの」
「そうなのかぁ」
そうだったら、あの夢はただの夢だったんだな。
「ハァ〜・・・・・・夢ならもっとマシなのを見たかったなぁ」
「それよりも、朝ご飯を用意しないの?」
「ああ、そうだった! 着替えるから出てってくれるか?」
「わかったわ! あ、そうそう。まだ正式な学生じゃないから、服装は普段着で大丈夫って言ってたわよ」
「あ、そう。わかった」
回転寿司屋で食べているときも、運動もするって言ってたからな。一応ジャージと体操着も持って行こう。
リタが部屋を出て行ったのを確認してから普段着に着替え、引き出しから予備の体操着とジャージを取り出してバックに詰めると、あっ!? と忘れていたことを思い出す。
そう言えば、俺が使っていたロッカーの中身をそのままにしていたな。中に入っている私物を回収出来るかなぁ?
「・・・・・・今そんなこと気にしていても仕方がないか。おーい、準備出来たぞ!」
あれ? 返事がない。どうしたんだ?
ドアを開き廊下を見てみたのだが、リタが何処にもいなかった。
どっかに行ったのか?
「リタァ! 何処に行ったんだぁ!?」
「リビングにいるから、こっちに来てぇ!」
何だ、リビングの方に行ったのか。
そう思った後にリビングへ向かうと、何と姉さんとリタがキッチンに立っていたのだ。
「おはよう洸夜」
「おはよう姉さん、早いね」
この家に一緒に暮らしていたときは、休日はだらしなく過ごしていたのに。
「まぁね、社会人になってから早起きが習慣になったのよ」
「本当かなぁ?」
実は弟にいいところを見せたいだけなのかもしれない。
「その顔信じてないわねぇ。まぁいいわ、起きたのなら朝食の手伝いをお願いしてもいいかしら?」
ゆっくりしていていいよ。って言ってくれると思ってた。
「いいよ、何をすればいい?」
「サラダ作るから、レタスを洗って」
「わかった」
冷蔵庫からレタスを取り出して、水を掛けながら洗い始める。
「ねぇ、それって魔法で水を出しているんじゃないのよね?」
「ん、ああそうだよ。水圧を利用して出しているんだ。このレバーを上下に動かせば水量を調節出来るぞ」
レバーを上下させて見せるとリタは驚いていた。
「もしかして、向こうの世界って魔法で水を出すのか?」
「そうよ。それ用の魔道具があるの。魔力で水量を調節出来るんだけどぉ、慣れが必要なの。製作者によって、操作がシビアだったり多く入れなきゃ作動しない物があるから、同じ魔道具でも選ばなきゃいけないのよ」
ピンキリがあるみたいだな。
「魔石の交換もしなくちゃいけないから、 費用が掛かるから魔道具いらないです。 って言う人もいるのよ」
「そうなんだ。こっちも壊れるときがあるから、そのときに修理を依頼するか新しい物を買うかのになるな。あまりに古過ぎたら修理出来ないって言われて新品を勧めて来るんだ」
その喋っている間にも、千切ったレタスを皿に盛り付けていく。
「リタも食べていくか?」
「あら、いいの?」
「1人増えたところで量は変わらないから、食べて行っても構わないぞ」
「そう、ならご一緒させて貰おうかしら」
そう言うとテーブルがある方へ飛び、テーブルの上に座る。
「こっちは用意出来た。姉さんの方は?」
「こっちも出来たわよ」
お皿に乗ったベーコンと玉子焼きを持っていた。
「リタちゃんの分は私と洸夜の分から出しましょう」
まぁ、リタの身長を考えると一人前食べ切るのは難しいよな。
「そうしようか」
食器棚から皿を1枚を取り出して、サラダと一緒にテーブルに置く。
「リタ、俺のところから分けてあげるから、自分が食べきれる量を教えてくれ」
「え、いいの?」
「パンとかあるから大丈夫だ」
「そう、じゃあお言葉に甘えて」
彼女はそう言うと、箸の片方だけを持って目玉焼きの一部を切り取った。
「これぐらいあれば充分よ」
「ウィンナーとかはいらないのか?」
流石に目玉焼きの切れ端だけじゃ、栄養バランスが悪いだろう。
「それも貰ってもいいの?」
「構わないぞ」
てか、妖精が肉類を食べても大丈夫なんだ。種族的に無理と思っていた。
そうやり取りをしている最中に、姉さんがリタの皿にウィンナーの切れ端を置いた。
「これぐらいあれば充分かしら?」
「ええ、充分よ」
彼女は姉さんにそう言うと、リタは目を瞑ってお辞儀をした。多分これが日本で言うところの、頂きます。なんだろうな。
「サラダの方は手で千切って食べてね。それじゃあ、頂きます」
「頂きます」
俺達もそう言ってから、朝食を食べた。食べている途中でリタが、 この目玉焼き、美味しいわ! 野菜も水々しくて甘い! と絶賛してくれた。
食べ終わった皿は水に漬けておいて、サラダは余ったのでラップをかけて冷蔵庫の中へ入れた。
家の戸締りをしようとしたが、姉さんがやってくれるそうなので任せることにした。
「さてと、ちょっと早いけど行きますか」
時間を見てみれば8時20分なので、ちょうどいい時間だと思う。
「そうね。行きましょうか」
リタは俺の肩に乗った。
「あ、洸夜」
「ん、どうしたの姉さん」
「行ってらっしゃい。また退学にならないように、気を付けなさいよ」
「絶対にならないっての!」
姉さんクスクス笑っているのを無視して、目を瞑ってから頭の中にイメージをする。
「・・・・・・転移!」
そう言った後に目を開くと、アニス理事長が机で座っていた。
「おはようございます、アニス理事長。ってあれ?」
何で困った顔をさせながら頭を抱えているんだ?
「ああ・・・・・・おはよう」
顔色も悪いってことは、わかった!
「昨日の寿司屋でお酒を飲み過ぎたんですね! 家に置いてある二日酔い用の薬を持って来ましょうか?」
「いや、二日酔いじゃないんだがぁ・・・・・・」
「え、スシ? 何その食べ物、美味しいの?」
リタが髪を引っ張って聞いて来るが面倒くさそうなので無視する。
「あれ? もしかして食中毒を起こしましたか? おかしいなぁ。向こうの世界のお寿司屋さんは、そういったのはかなり気にしているはずなの・・・・・・」
「それ以上言うなバカッ!?」
な、何だ? バカって。俺はただアニス理事長のことを心配してたのに。
「向こうの・・・・・・世界?」
「「へぇ?」」
俺とリタが下を向くと、背中から突き飛ばされたような格好で女の子が倒れていた。しかも、スカートが捲れているのでパンツが丸見えだが、そんなことも気にせず、ギギギギッっとぎこちない動きでアニス理事長に顔を向ける。
「あ、あの、アニス理事長。この人達は誰ですか?」
俺がそう聞くと、アニス理事長は下を向き、 ハァ〜・・・・・・。 とため息を吐いた後に、諦めたような顔をさせながら、話し始めた。
「ウチの学園に通っている生徒だ。来るタイミングが悪かったな」
「「何いいいいいいいいいいいいっ!!?」」
俺とリタは心の中で、やっちまったぁ!? と後悔したのだった。
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