嘘つきピエロの微笑み
雪鳴 月彦
プロローグ
【1】
「こちら海咲。たった今強盗犯を取り押さえました。人質は無事です。至急応援をお願いします。場所は――」
子供の泣き声が聞こえる。赤ん坊ではない。たぶん、三、四歳くらいの女の子。
たしか隣には母親が一緒だったはずだ。それなのに、なぜあの子は泣くのだろう。
こんなとき、親が寄り添っていても子供とは泣いてしまうものなのだろうか。
わたしは、どうだっただろう。
幼い頃の記憶が、もうほとんどない。時が流れるにつれて記憶は消えていく。
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