Thank you for Friends!~残念勇者の変態事情~

真宮シンジ

第1話プロローグ

「…寺!天王寺!聞いているのか⁉いい加減にしないと剣道部の飯田先生に言いつけるぞ!」

 顔を真っ赤にして怒るおっさん、いや国語の教師。

 確か河本って先生だった気がする。

「河本先生、言いるけるなら副顧問の愛ちゃん先生にして下さい」

 マジ顔で答える俺。

 愛ちゃん先生のお説教って最高のご褒美だと思うんだよね。

「私は河本ではない!河上だ!それと天王寺、木村先生から苦情が来てたぞ!木村先生を見る目がエロいって!いい加減にしろ!」

「あんただって見てんだろ⁉昨日あんたが階段で愛ちゃん先生のスカート覗こうとしてたの知ってるぞ!俺の日課奪うな!」

 激怒するスケベオヤジに憤慨する俺。

 愛ちゃんは俺の癒しだ!こんなスケベオヤジに邪魔されてたまるか!

「ぐぬぬっ、このクソガキ…!」

 青筋がビキビキ鳴ってるスケベオヤジ。高血圧でぽっくり逝くぞ?

「キーンコーンカーンコーン」

 タイミング良く授業終了のチャイムが鳴る。ラッキー!

「これで今日の授業は終わりとする。天王寺は後で生徒指導室に来なさい。…あれ?天王寺はどこに行ったのだ?」

 そんなスケベオヤジの間抜けなセリフを背に俺は教室を後にする。

「今日は華の色女学院にナンパしに行こ~♪」

 鼻歌混じりの即席の替え歌を歌いながらさっさと校門を出ていく。

 天王寺佑人、これが俺の名前。16歳の高校2年生。

 自分で言うのも何だが容姿は整っている。

 女の子たちにキャーキャー言われるくらいには。

 でもモテない。

 話してみると皆、軽蔑した目で俺を見て去っていくのだ。

 学校で変態剣士とか呼ばれてるけど、俺結構まともだと思うんだよね。

 俺の特技は剣道だ。

 自慢ではないが(フツーに自慢)、俺はこの間のインターハイで準優勝した。全国で2位だぜ?すごくね?

 そうこうしている間に、華の色女学院に着いた。

「あっ、あの人モデルさんかな?」

「彼女待ってるのかな?」

「いいな~私もあんな彼氏欲しい~」

 等々、女子高生の黄色い歓声が聞こえてくる(これはマジ)。

「イケメン死ねよ」

「あんなのがいるから俺はモテねえんだよ」

「どうせあんな奴ヤリ〇ンだよ」 

 等々、お兄さん方の誹謗中傷も聞こえてくる(これもマジ)。

 おい、最後の奴殴るぞ?俺はまだ童貞なんだよ。

「あの」

 話しかけてくる女子高生。上目遣いが可愛い。

「どうかしたか?」

 優しく答える俺。

「あなた童貞臭いですね」

「ブフォッ」

 噴いた。

 この女子高生ヤベェ。

 初対面の人に童貞臭いとか普通は言わねえだろ?

 キ〇ガイだ、コイツ。

「だってあなた、さっきからスカートばっかり見てるし、とても経験者には見えませんよ?」

 だからって、フツーは童貞臭いとか初対面の人に言わねーから!

 でもまあ、ここはイケてる男の余裕ってやつで乗り切ってやろう。

「そうかな?俺はただ彼女と待ち合わせをしてただけだって」

「ウソですね」きっぱり。

 あっさり見破られた。

「なんでそう思ったか聞いてもいい?」

「まず、あなた目つきがエロいです」

「それは生まれつきだ」

「彼女がいたとしても浮気相手を探してるアウトな人ですよ、あなた」

 マジ顔で理由を教えて下さるキ〇ガイ女子高生様。

 ていうかコイツ「まず」って言ったよな?まだあんの?

「次にあなた、服がダサいじゃないですか。さすがにこんな服の男と付き合う女はいませんよ」

「これは制服だ。謝れ。うちの学校の生徒全員に謝れ」

 嘲笑を浮かべるキ〇ガイ女子高生様は俺の言葉に耳を貸さない。

「最後に、あなたコミュ障ですよね?どーせヲタクなんでしょ?だってちゃんと喋れてないですし。ていうか、あなたナンパしに来る前にコミュ障直したほうが良いと思いますよ?」

 さらに嘲笑を深めるキ〇ガイ女子高生様。うん、うぜぇ。

 あとヲタクって決めつけんな、ヲタクだけど。

「天王寺君ですよね?」

 俺の名前を呼びながら女の子が近づいてきた。

 あ、この女の子剣道の試合会場で見たことあるな。

「私、天王寺君のファンなんです!こんな娘ほっといて私とお話ししませ  んか?」

 フッ、キ〇ガイ女子高生様よぉ、これが俺の力よ。

 今度は俺が嘲笑を向ける。

「ぐぎぎ、私は認めませんよ?」

「へいへい、どーぞお好きに」

 適当に流す俺。

 その時、俺の視界に大型トラックが凄まじいスピードで突っ込んでくるのが見えた。

 俺は咄嗟に斜め後ろにいたファンの女の子を蹴り飛ばし、正面のキ〇ガイ女子高生様を抱えて緊急回避。

 しかし気が付くのが遅すぎた。

 巨大な影に体が覆いつくされて……。

 ベキ、メキという効果音が体中から鳴ったのを聞いた。

 それを最後に俺の意識は暗転した。

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