第361話  引き渡し

 まずは若年層を連れてくる事にし、ゲートを出した。実際にその姿を見なければ実感出来ないと判断し、第一陣を連れてきた。


 連れてくると言っていたが、首席はかなり驚いていた。


 部下に指示をし名前を控え、親を呼ぶ事にしたようだ。

 彼女達に万が一危害が加えられたり要らぬ誹謗中傷があった場合街に責任を負わせる、ドラコンの力を使うと宣言しておいたから額の汗を拭っていた。


 約70名の少女達が俺の後ろにいた。広いホールがあるので、そこに移動し、親が来るのを待つ事にし、一人一人がヒナタにハグとお別れをしていた。


 動きが早かった。俺も失念していたが、20分もすれば最初の親が引き取りに来た。

 皆恐怖に駆られ、慌てて動いていたからだ。だから親は仕事を放り出して慌ててきた感じだった。流石にヒナタに差し出された者の名簿があり、親の所在は把握されていたようだった。


 トリシアとリギア、ナタリーを連れてきていた。少なく共ナタリーがいれば屋敷と念話には困らない。


 彼女達と後はこの屋敷にいる行政側のスタッフ達にて、引き取りに来た親に状況を説明して貰うようにした。


 概ねこういう内容だ。

 女性達は例外無く今までヒナタに大事に育てられ、高等教育を受けている。

 スキルを見ると全員に四則演算というこの世界の中では中々習得している者が少ない計算のスキルがちゃんと身に付いている事が分かっている。


 教養もかなりあるので、親元を離れ、寄宿学校に預けられていたとでも思うようにして貰うのが一番良いというような旨を説明している。

 中々受け入れるのに大変だろうと。


 それと皆を見ていて少し違和感があった。

 年長者の何人かが、そう、生き返った何人かをサポートとして一緒に来ていた筈なのだが、二十歳の者しかいない。ステータスを見ると二十歳だった。全員の顔と名前を覚えている訳ではないのだが、特徴のある顔と髪型から最年長の者だけははっきりと覚えていたのだが、どう見ても二十歳の本来の年齢よりも十歳若いと思われるような容姿なのだ。


 驚いた事にステータスを見ると二十歳だった。


 100人以上が一度死んだのだが、その者達を俺が生き返らせた後は基本的に全員、すぐ動く事ができたらしい。ただ病床に伏せっていた者達だけはそういう訳にはいかなかった。体力が無さ過ぎており、まだ寝ているらしい。



 俺はヒナタに質問した


「なあ、ヒナタ。俺が間違ってなければ、彼女って最年長の30歳だったよな?どう見ても20歳なんだがどういう事だろう?何故かステータスを見ると20歳なんだよ」


「わが主よ。わが主の力により彼女達の体を20歳の体にして頂いたのではなかったのですか?一度死んだあの者達は全員20歳を超えておりましたが、例外なく20歳を超えての外観で生き返った者はおりませんよ。皆どう見ても20歳の体になっております。知らなかったのですか?」


「多分心の奥底で、若がえらせてから送り出したいと思ったからこうなったのかもな」


「ふふふ。やはりお優しいのですね。皆感謝をしておりましたわ」


 そうやって若年層の引き渡しが始まったのであった。


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