第215話 焦らず

 朝目覚めると椅子に座り裕美が心配そうに俺を看病している。


「良かったわ!目が覚めたのね」


「大袈裟だな」


「何言っているの!今は夜よ」


「えっ!?俺は疲れていて起きられなかったのか?」


「違うのよ。いくら起こそうとしても目覚めなかったの」


「また1000階層のようなダメージかな?迷惑掛けたね。じゃあ腹も減ったし夕食にしようか」


「今回は戦闘が短かったとはいえ丸1日目覚めなかったのよ。心配したんだからね」


 俺は言わなかったが味覚がおかしかった。前回は辛みが感じられず、酸味が甘味に変わったが、今回は味覚が失せた。


 風呂は長風呂になった。二人でゆったりと湯船につかる。そんな時間が心地良かった。


 寝る前にお礼でマッサージをしてあげた。


 誰ですか?性感マッサージと言うのは?残念ながら真面目な凝りを解すマッサージてすよ。


 裕美は徹夜で看病してくれていて、余程眠かったのかマッサージ中に寝てしまい、穏やかな寝息を立てていた。



 翌朝からダンジョンを再開していく。


 499階層は恐ろしかった。

 そいつらの群れを見た瞬間に二人して泣きながら抱き合い失禁した!そんなレベルだ。


 体長1m位で黒光りしているあれだ。ダメな奴だ。


 あいつらは羽があるので俺が飛んでいても向かっているんです!ごっきーきもいっす!


 久し振りにサラマンダー先生の出番だ!俺の護衛と殲滅部隊を送り出した。


 489階層からは別の奴に変わり安堵した。


 しかし、裕美は震えている。俺が反応したからだ。夜が怖い。


 美女と美少女の大群だ。おっさんには効果抜群でした。しかも誘惑されるのだから堪らない。


 涎やらなんやら色々出ました!


 途中で目隠しされ、裕美に誘導され飛んで行くが壁や天井にぶつかりまくった。

 勿論俺は攻撃なんて出来ません!裕美は鬼の形相で攻撃しまくっていた筈だ!音がガンガン聞こえたからね。


 シェルターにて裕美のご機嫌取りに奔走した甲斐が有ったのか、ごっきーのトラウマか妙に優しかった。


 お互い今日の事は何も言わない。記憶の封印をしたい位だ。


 寝る時は裕美は強く抱きついて震えていた。怖かったのだと思いたい。俺が美女を見て反応していた事の怒りではないと信じたかったが結局寝付くまでしがみついていた。


 でもまた明日は美女編なんだけどさ。ごくり。


 俺はしょうもない奴だよな。


 一応皇帝なんだけど、常に女の事を考え、対処に振り回されているのだ。


 裕美は明日機嫌が良いかな!?と考えているとやがて寝ていくのだった。

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