第201話 1400

 あれから数日が経ち今朝も男二人のむさ苦しい食事だ。そう、ヒロミとの朝食だ。

 向こうでの世界の事を聞くと俺と同じで、記憶が希薄で家族の名前や顔も覚えておらず、手帳に記録した内容を見てそんなだったかな?と何となく感じるという。そう言われ俺も見てみると妻子がいたようだ。いたようだと言うのは、記録を見てもなんとなくすら覚えていないからだ。そう、完全に記憶から無くなったのだ。向こうでの自分の事が既にに完全に記憶から欠落しているのだ。大きな事件とか、歴史や地理は覚えているが、どういった学校を出たかとか友達の事も個人情報が白紙になった感じだ。特に悲しいとかも思わなくなっている。今は愛する妻達がいる。それで十分だ。帰ったら何人かのお腹が大きくなっているかな?と第一子の誕生に期待に胸を膨らませる感じだ。第三子なのだが。


 あの女の話をする。今晩も逢えるかなと聞くと、いい子にしてれば会えるさと言われ


「その女性の事を好いておるのか?」


「何故か分からないんだが好きなんだ。恐らくギフトの影響だと思うが、妻にしたい位に強烈にね。今の俺の心の拠り所なんだよな。ヒロミも会っている奴の事を好いているのか?」


「そうじゃな。このダンジョンを出て人間に戻れたら結婚したいと思う程にな」


「そうすると日本に帰れなくなるのと違うか?」


「そうじゃな。結婚するというのはそういう事じゃろう。儂は元の体に戻る手段が日本に帰る事しか無いと思いこんでおったでな。元に戻れるならこの世界に骨を埋めても良いと思っておるのじゃよ」




 そんな話をし、どうしてそんな都合の良い相手が現れるのか、疑問に思わなくなってしまっていた。

 それはさておき今日の目標は1400階層だ3,4日前はは12階層を無理矢理進んで今日は1410階層のスタートだ。おそらく100階層毎に何かがあるのではと警戒をしている。


 1400階層までは何事もなくいつもの調子だ。

 夕方に無事にボス部屋に着く。少し休憩しそして気合を入れて突き進む!


 そしておもいっきり罠に引っ掛かりそうになる。というか俺だけ掛かったのだかた。

 ボス部屋の真ん中に何故かベッドがあるのだ。そして短い逢瀬のあの女性がセクシーなネグリジェを着ていて俺を手招きし


「今日はずっと一緒に居られるの。抱いて!」


 俺はもう抱く事しか考えられずベッドに向かい押し倒しにかかる。

 が、押し倒せなかった。ヒロミに殴り飛ばされたからだ。暫く痛みで意識が朦朧としている。


「儂には効かぬぞ。残念だったな」


 そうして鬼の形相に変わった女のなりをした何かと、ヒロミが闘いだした。

 かなり強く40合程打ち合い、驚いたことにヒロミのお腹にに剣が刺さり、腹筋で無理矢理抜けなくした隙きに、正気に戻った俺がそいつの後ろに転移し、一気に首を刎ねてようやく終わった。急ぎヒロミの怪我を治し、今日の休憩の準備をするのであった。ドロップはヒロミが、使える鎧だ。ドラゴニックが壊れたので丁度よい。


 寝る前が楽しみで仕方がない。短い時間だが、毎晩必ず現れて俺の心を癒す。

 待ち遠しいとしきりに呟いていたようで、ヒロミにからかわれて赤くなって行くのであった。

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