第02話 休息
ルーク達四人は依頼を受けてから数日間歩き続け、目的地から一番近い町へと辿り着いた。
既に日が暮れていたため、すぐに宿をとってから食事処へと入った。
「なんかベウロ、今日はいつもよりも楽しそうだね」
運ばれてきた食事を口にしながら、ルークはそう言った。
「楽しいというよりは、嬉しいんです。これでやっと最後の依頼ですから。皆さんと依頼を受けるのがこれで最後というのは悲しいですけど、それでも自分の冒険者としてのランクが上がるというのはすごく嬉しいです。……って言っても、まだランクが上がるかどうかは分からないんですけどね」
「ベウロさんの実力なら、十分次のランクに上がってもやっていけますよ。ギルドマスターが私たちに実力を見極めて欲しいと依頼した時点で、実力は認められているようなものでしょうし」
「クラリィの言う通りだよ。私やルーク、クラリィはその時の状況が状況だったからなし崩し的にランクが上がったけど、その時には結構苦労したんだ」
「苦労……ですか?」
「うん。ある程度の説明はしてくれたけど、ランクが上がって受ける依頼が変わるとほとんどの事が初めての事だったからね。きっと今回の件は、ギルドマスターのベウロ君が私達みたいな苦労をしないようにっていう配慮なんだよ」
フェミの推測は当たっており、ギルドマスターは実際にその目的でルーク達やランドンと言った環境のせいでランクが上がって苦労した冒険者にベウロのような冒険者をあてがっていた。
「じゃあこれは……次のランクで受ける依頼を一通り経験させることが目的ってことですか?」
ベウロの問いかけに、三人が頷いた。
それからさほど時間を掛けずに三人は皿を空にして、食事処を出て宿へと向かった。
宿へ着くと、四人は各々の部屋に戻る前に一旦集まった。三人の顔を一度見てから、ルークは話を始める。
「明日の話だけど、目的地まではここから一時間ぐらいで付く。だから、すぐに洞窟に入ろうと思うんだ」
「出発の時間はどうするの?」
フェミは首を傾げながらそう聞いた。
「距離もないから、ちゃんと太陽が昇ってからでいいと思ってる。目的地についてから軽い昼食をとる、それぐらいの時間が良いかなと思ってるんだけどどうかな?」
その提案に、全員が頷いた。
☆
ルーク達が夕食をとった翌朝、ギルドでは依頼を終えたソラ達が依頼達成の報告をするためにギルドに来ていた。
その報告を終えて報酬を受け取るのとほぼ同時に、とある場所へと向かう。
「で、俺に用ってのは何だ?」
珍しく自分を読んだネロに違和感を感じながら、ギルドマスターはそう問いかけた。
一方のソラはというと、ティアと共にミラの方へと視線を移していた。そもそも、ギルドマスターに聞いてみたいことがあると言い出したのはミラだった。
今まで考えすぎだと頭の片隅に置いていたミラだったがが、どうしても気になって直接聞いてみることにした。
「お主がルークとフェミ、クラリィにあの少年のお守りをさせておる理由を聞きたい」
「何だ、あいつらから聞いてないのか?」
「聞いた。ランクを上げる冒険者の見極めじゃろう? 妾が聞きたいのはそれ以外の理由がないかという話じゃ」
その言葉に、ギルドマスターは首を傾げた。本当にそれ以上の理由が無いのだから、当たり前である。
ミラはそんな返答に「そうか」と答えてから、再び口を開いた。
「では聞き方を変えよう。あの少年を三人の元へと進めるようなことをした者はいなかったのかや?」
ギルドマスターは少し驚いた表情をしてから答えた。
「あぁ、確かにいた。何で分かったんだ?」
呑気なギルドマスターを横目に、ソラ、ティア、ミラの三人は若干の焦りの表情を浮かべていた。
「それは後でよかろう。それより、勧めた人物は誰かを答えて欲しいのじゃが……」
その言葉から少しの緊張感を感じ取り、ギルドマスターは真面目な表情で答えた。
「副ギルドマスターをしているビトレイだ。かなりの有望株だから是非あの三人に頼みたいってな」
「確か、デスペラードとか言うクランを作った奴じゃったな」
「よく知ってるな。お前の言う通り、ビトレイはデスペラードの創始者のようなものだ。先に言っておくが、俺はこれ以上聞かれても答えられないぞ? デスペラードはビトレイが裏で高難易度の依頼を回しているせいで表には出てこないから、俺も全てのメンバーを把握している訳じゃない。リーダーの
ギルドマスターは空気が張り詰めたのを感じて、そこで言葉を切った。
バジル。
その名前にソラの心臓は大きく高鳴った。もし仮に、ソラの知っている人物と同一なら、三年以上前から姿を見せないというのは他でもないソラがその命を奪ったからだ。
ソラは立ち上がるのとほぼ同時に、口を開いた。
「ギルドマスター、今ルーク達はどこにいるんですか?」
ギルドマスターは事情を聞こうとはしなかった。今まで見たことのないほどに焦っているネロを見て、それどころではないことを察したからだ。
「付いて来い。こっちにあいつらが受けた依頼の情報があるはずだ」
三人はそう言うギルドマスターの後に続いた。
しかし、何故かルーク達が今日受けた依頼の履歴だけが綺麗に消え去っていた。
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