第44話
普通の自己紹介だった。
しかし、俺は彼女の本性を知っている。
だからだろうか、あまり話が入ってこなかった。
「えっと、みんな仲良くしてください!」
そう高石が言って自己紹介を終ろうとした瞬間、俺の隣に座っていた強が手を挙げた。
「はい! 昨日の権利でどんな事をお願いするんですか!」
「え?」
昨日の権利とは、なんでも願いを叶える権利の事だろう。
確か、期限は今日だったはずだ。
でも、俺も強とは違った意味で気になっていた。
一体高石は何をお願いするのだろうか?
まさか俺絡みのお願いとかじゃないだろうな?
なんてことを考えていると高石が俺の方を横目でちらりと見た。
そして高石はにやりと笑った。
「えっと、今日の夕方にはわかると思うから今は言いません」
「ちぇ~! 残念」
高石は強の質問に答えるとその場に腰を下ろした。
俺はなんだか嫌な予感がした。
「これで丁度班員全員の自己紹介が終わったわねん」
「あぁ、やっぱり知ってることばっかりだったけどな」
強と早乙女がそんな話をしていると先生がみんなに向かって話始めた。
「はーい、それじゃあそろそろ班での自己紹介を終了します! 今度は班で二人ずつ他の班に移動して自己紹介を行ってください!!」
これはチャンス!
ここで俺が高石以外の誰かと他の班に行けば、高石と離れることが出来る。
「じゃあ俺と……」
「あ、言い忘れたけど、班長はその班に残ってね!」
俺が行く、そう言いかけた瞬間先生からそんな言葉が聞こえてきた。
マジかよ……。
「だってよ、じゃあ俺と早乙女が行くわ」
「え!? 強と早乙女が行くのか?」
「あぁ、クラスの女子と良好な関係を築いてくるぜ!!」
「私も他のクラスの男子と良好な関係を築いてくるわ!!」
結局私欲かよ……。
俺がそんな事を思っているうちに、二人は他の班に行ってしまった。
「……マジかよ……」
俺の隣に座っていた強が居なくなったことにより、強が座っていた場所を一個詰める形になってしまった。
それにより、俺の隣には高石が来てしまった。
最悪だ……。
「うふふ……隣同士だね」
俺がそんな事を考えていると、高石が小声で俺にそう言ってきた。
「そういえば、次はどうやって私から嫌われるつもりなの?」
「っ!?」
ニヤリと笑いながら、高石は俺にそう尋ねてきた。
メッセージで言われるよりも、やはり本人から言われる方が恐怖を感じる。
俺は自分の顔が青ざめるのを感じた。
「うふふ……残念だけど……私が木川君を嫌いになることは絶対にないから……」
「……そ、そうか……」
普通なら女子にこんな事を言われれば嬉しいはずなのに、俺は全く嬉しいとは思えなかった。
大体なんで高石は俺の事が好きなのだろうか?
俺は高石に何かしただろうか?
俺がそんな事を考えていると、同じクラスの男子二人が班にやって来た。
「お、木川の班か」
「よろしくね」
「お、おうよろしく」
「ん? どうした? 顔が青いぞ」
「あ、あぁ……気にするなよ。そ、それより自己紹介を頼む」
「そ、そうか?」
俺がそういうと、やって来た二人のうちの一人が立ち上がり自己紹介を始めた。
「えっと、俺の名前は宮明優威(みやあき ゆうい)って言います! 趣味はボーリングで特技もボーリングです! 最高スコアは180!! あ、あと木川は死ね」
「ん?」
「へ、へぇ~ボーリングが得意なんですか? 私はボーリングのボールが重くて持てなくて……」
「子供用の軽いボールなら持てるんじゃない? 今度やってみたらいいよ」
宮明が横川の質問に答えていた。
それは別に良い、仲良くなることは良いことだ。
しかし、俺だけだろうか?
宮明の自己紹介の最後に違和感を感じたのは……。
「あ、あと、女の子とイチャついて登校してきたり、女の子と一緒に学校に遅れてくるリア充の男は嫌いです」
「おい待て! それって俺の事か!?」
「いや、木川とは言ってないよ? 死ね」
「おい、今死ねって言ったよな? 確実に俺だよな!!」
「あ、じゃあ次は僕の番かな?」
「いや、俺の話を聞けよ!」
俺の話を流され、そのまま次のクラスメイトの自己紹介が始まった。
「えっと、僕は沢井聖(さわい せい)、趣味は音楽鑑賞で、特技はピアノを弾くことです。結構上手いんだよ? あ、あと木川君は嫌い」
「ん?」
「へぇ~すごいね! ピアノ弾けるんだ!」
「うん、幼稚園の時からやってるからね」
いや、ちょっと待って、こいつもなんか俺の事を罵倒しなかった?
「あ、あとシンプルに木川君は嫌いです」
「それはただの悪口だよ! 何? 俺何かした!?」
「昨日の一件で木川君はクラス全員のモテない男子の敵だよ……」
「敵って……どんだけ根に持ってるんだよ……」
高石の事もあるってのに……。
はぁ……なんでこうなるんだ。
俺がそんな事を思っていると宮明と沢井が他の班に移動し、今度は同じクラスの女子二人がやってきた。
「あ! ここってもしかして千鶴の班?」
「そうだよー! おいでおいで!」
どうやらこの女子二人は高石の友人しい。
俺はこの二人とは同じクラスだが、あまり話たことは無い。
名前を知っている程度だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます