第37話
*
何故高石が俺の連絡先を知っているのか、それはこのクラス研修の為に班の皆で連絡先を交換していたからだった。
しかし、俺から高石に連絡をした事は無い。 それなのにいきなり高石が何故俺に連絡をしてくるのか……理由は簡単だ、昼間のあれだろう……。
「ごめんね、急に呼び出して」
「いや……」
俺は呼び出しを受け、湖に来ていた。
強と早乙女には適当に理由を付け、俺は一人で湖に来ていた。
高石はいつも通りの笑顔で俺の前に現れ、ニコニコしながら俺を見ていた。
「どうしたの? もしかして何か警戒してる?」
「警戒もするだろ……」
「そうだよね、あんな事を言われたら誰だって警戒するよね?」
なんだこいつ……一体何を考えている。
俺を脅迫するなんて言っていたが、目的はなんだ?
「で、要件はなんだ?」
「ん~? まぁ、それは良いじゃん、少し歩こうよ」
「はぁ?」
俺は高石に言われる通り、湖の周りを歩き始めた。
綺麗な月が出ており、心なしか空も街中より綺麗な気がした。
「あ、木川君! 隠れて!!」
「え? なんでだよ?」
「良いから!!」
「お、おい! 引っ張るな!!」
歩いている途中、俺は高石に引っ張られ茂みの中に隠れた。
一体何事だろうかと思い、高石の視線の先を確認する。
「ん? あれは……上屋敷か?」
視線の先には上屋敷が居た。
上屋敷は見知らぬ男子生徒と一緒で、向かい合って何か話しをしている様子だった。
耳を澄ませると、二人の会話が少し聞こえてくる。
「か、上屋敷さん! 僕……君の事が……好きなんだ! 付き合って下さい!!」
なるほど、告白か……。
強達の言ってた通り、こうやって今夜告白する奴らが湖に沢山居るわけか……。
高石はこれに気がついて俺を茂みに引っ張りこんだのか……。
「えっと……ごめんなさい!!」
あ、上屋敷断った。
良いのか?
結構顔立ちも良かったのに。
振られた男はこの世の終わりみたいな顔をして、そのまま上屋敷の前を去って行った。
「あの子……確か木川君の知り合いよね?」
「あ、あぁ……隣のクラスの上屋敷だ。委員会が同じでな……」
「ふーん……そうなんだ……可愛い子ね」
そう話す高石は笑顔だったが、目は一切笑っていなかった。
俺はまだ高石を警戒しており、自然と距離を置いていた。
上屋敷も居なくなったところで俺たちは茂みから出て、再び湖の周りを歩き始めた。
「そろそろ教えてくれないか? 俺に何の用なんだ?」
「ん~……大体察しは付いてるんじゃない?」
確かに大体話しの内容は想像が付く。
恐らく八島との事だろう。
この口調……自分の方が立場が上であることを示しているような感じがする。
まぁ、俺は弱みを握られている側なのだから、立場は下なのだが……。
「まぁな……それで……その事に付いての話しなんじゃないのか?」
「うん、そうだよ……じゃあ、そろそろ本題に入ろうか」
「……」
来た……俺は何を言われても動じないようにしなくてはと考えていた。
そして、高石は俺に向かって笑顔でこう言った。
「私と付き合ってくれる?」
「………ん?」
あれ?
おかしいな・・・・・・なんか妙な幻聴が聞こえたぞ?
「悪い、もう一回言って貰えるか? 良く聞こえなかった」
「え? だから私と付き合って欲しいって」
「あぁ・・・・・・なるほど・・・・・・」
どうやら俺の聞き間違いでは無かったらしい。
あぁ・・・・・・なるほどなるほど・・・・・・確かにこの湖では今夜、うちの学校の生徒が告白大会をやってるしな・・・・・・。
「ってなんでだよ!!」
いや、動揺しないようにとか言ってたけど無理だわ!!
なんでだよ!
何がどうなったら、高石が俺に告ってくるんだよ!!
マジでこいつ何考えてんだよ!!
「なんでだよって言われても・・・・・・そんなの私が木川君の事が好きだからに決まってるじゃん」
「いや、俺はてっきり八島と俺の関係について何か言われるのかと・・・・・・」
「あぁ、安心して、それも関係あるから」
「あるのかよ・・・・・・てか、どっちかって言うと俺にとってはそっちの方が本命なんだけど・・・・・・」
「まぁ、私も正直ビックリしたよねぇ~まさか木川君の引っ越し先が八島さんの隣なんて」
「そこまで知ってるのか! お前・・・・・・一体どこでその情報を!」
「ん? 別に何も特別な事はしてないよ? ただ毎日木川君の後を付けてただけだよ?」
「おい! 何結構衝撃的な事をさらっとカミングアウトしてんだよ!!」
マジかよ・・・・・・全然気がつかなかった。
てか、別な意味でこいつが怖くなってきた・・・・・・。
もしかしてこいつは、俺が八島との関係を秘密にしていることに気がつき、そのネタを餌に俺との交際を!?
「それで・・・・・・どうするの?」
「え?」
「だから、私と付き合ってくれるの?」
「そ、それは・・・・・・」
そう言われた瞬間、俺は高石の本心が聞こえた気がした。
高石はきっと本当はこう言いたいのだ。
付き合うって言わないとバラす・・・・・・と。
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