不思議な縁
ここ一週間ほど続いていたふわふわとした気分は、昨日の父とのコミュニケーションを区切りとしてようやく完全に収まった気がします。
決して私の動向を把握していたわけではないでしょうが、家に帰ってきた時の私の顔を見て、
『何かいいことがあったみたいだね』
と察するあたり、さすがだと改めて感じました。親としては未熟な部分もあるのだとしても、様々なことを見通す力は備えているのでしょうね。
やはり高い能力を持った方だとは思います。尊敬に値する方です。
こうして月曜日からはまたいつも通りの私として過ごすことができました。
そして週末。
次の月曜日は、絵里奈さんと玲那さんの誕生日ということで、もしよろしければいつものカラオケボックスで誕生日パーティを提案させていただいたのですが、さすがにここのところイベントが続いたこともあってか、今回はご家族だけでゆっくりと祝いたいとのことでした。
また、玲那さんが執行猶予中であることも鑑み、プレゼントは辞退したいとも。
そこまで気になさる必要はないはずですが、ご自身がそのような気分になれないということであれば、こちらから無理にというのも違うでしょう。ですからプレゼントについても自重させていただくことになりました。
「玲那さんって、本当に真面目な人だよね」
フミがそう口にします。
彼女も、玲那さんの境遇を知った上であの事件のことを考えると、幸せになって欲しいと心から思っていました。
するとカナが、
「真面目だからこそ事件になっちゃったんだと思うよ」
と。その上で、
「うちのバカ兄貴とは大違いだよ……」
とも。
それもカナの実感だったのでしょう。
彼女のお兄さんの事件については、いまだに着地点が見いだせない状態でした。いつまでも長引かせたところで誰も得をしないのは明白でしょうに……
いえ、『だからこそ』なのでしょうか。自身に関わった人すべてを苦しめ、もろとも不幸にしたいが為にそのようなことをしているとも考えられますね。
彼にはもう、失うものは何もないということでしょうか。
そんな彼とは正反対に、失いたくない大切なものがあるが故に自身の起こした事件に区切りを付け、幸せになるために着実に歩みを進めている玲那さん。
これほどまでに対照的な存在と同時に関わることになるというのも、不思議な縁というものでしょう。
自身の過ちと正面から向き合って更生を誓っている玲那さんは当然として、カナのお兄さんのことも、私にとって大切な友人であるカナのためにも、見捨てることはしたくありません。もし完全に見限ってしまえば、それこそ彼は際限なく落ちていき、周囲に不幸をばらまくでしょう。
それが分かっていて放置するのは愚策であると、私は思ってしまうのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます