「プレゼント」

 身が震えるような寒い日だった。双子の娘からサンタへのお願いをそれとなく聞き出す大役を終えた、その翌日だ。彼女らもサンタの存在に疑問を抱き始める年頃になっていたが、母親としてはもう少しの間だけでも赤服役の大変さを夫とともに共有したいなんて思う。そんなことを考えながら娘達がいないことを確認し、部屋で大人しく遊んでくれているようだ、とノートパソコンを立ち上げた。自分たちの時代ならばサンタクロースは玩具屋で、トナカイは両親だったものだが、今では彼らも電子化してしまったと言えるだろう。仕事を全て任せるのも癪だからと包装紙だけは別に用意して、物置に隠しておいた。

 サンタへの依頼を済ませた辺りで、私はようやく異変に気付いた。あまりにも静かだった。家事の途中でも構わない無邪気ないたずらっ子が二人も居るのに。急に不安になった私が廊下へ出ると正しく包装紙を隠していた物置がひっくり返されたように荒らされていた。参ったな、と思いながら娘達の部屋の扉を急いで開ける。そこにいたのは小さなサンタクロースだった。

 双子の妹の方がせっせと例の包装紙で何やらプレゼント作りに勤しんでいたのだ。扉の音でこちらに気付いたのか「まだなのに!どうしよう!」と大慌て。優しく「何をしていたの?」と尋ねる私に、しょうがないと言わんばかりの表情で「お母さんね、誕生日でしょう?」とサプライズ計画を口にしながら差し出してきた。すっかり自分のことなど忘れていた私は感涙を堪えながら「空けてもいい?」と尋ねた。今思えば一秒でも早く空けるべきだったが、余りの嬉しさに私は娘がいいよというまで押し問答をした。

 ようやく折れた娘の前で何重にも施された包装を解く。やり方が分からなかったのだろうけど、これだけシワが付いてしまったらクリスマスは買い替えるしかないな、なんて呑気な気分だった。大人でも苦労するほどの包装を開けた私は中身を見て息を呑む。「あのね、お姉ちゃんと一緒にお母さんが一番好きなものをプレゼントしようって決めたの!」と娘が言っていた。確かにそのプレゼントは私が"一番好きなもの"だった。もう冷たくなったもう一人の娘が箱の中から私を見つめていた。

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