第13話【地図作成部隊出発】
「今すぐハンナさんを兵種長に上げて下さい!」
参謀室に入るとクローリスが意外な要求をスズさんにしていた。
スズさんは実はクランの人事の責任者でもある。
理由はクランのメンバーが皇国軍に復帰した時、階級がそろっていないと混乱するためだ。
だからクローリスが役職の交渉をスズさんとしているのはただしい。
だけどハンナとクローリスは仲良かったか?
制服を採寸したくらいで接点は無いはずなんだけどな。
「クロウ、ハンナは兵種長にいずれ戻す予定だろ? なんで今なんだ?」
「それはですね、バーベン領公共事業の件で、旧第一小隊を率いる人がいないからです」
鼻息のあらいクローリスを落ち着かせるため、ソファに誘導してテイの準備をする。
「頭が痛い話ですが、旧第一小隊はハンナのワントップ体制だったんです。彼らを率いる事ができるのは皇軍では私くらいなんです。でも私も仕事を抱えているので」
「ハンナの代わりをスズさんがする? そんなスズさんの無駄づかいは認めません」
ぴしゃりと言うとクローリスは口をへの字にまげられ、スズさんからはジト目で見られた。
「わかってますよ。だからハンナさんなんじゃないですか。地図作りでつまずいていたら納期にまにあわないですよぅ」
泣きつくクローリスをかわしてミルク・ビーの巣からとれる白蜜がたっぷり入ったテイを渡す。
ぐずるクローリスにはこれが一番だ。
「で、ハンナを兵種長に上げたらそんなにまずいのか?」
「昇級の理由がないんですよ。降格の理由ならあるんですけどね」
この間の試験で僕を射殺しかけた件か。
「馬鹿正直に書く必要はないだろ。あの時は僕がミスして攻撃されそうだったから
スズさんは僕の提案に少し考えた様子だったけど、すぐに納得してくれた。
「ではそうします。団長が飛び道具で死ぬわけがないのは皆知っていますし。それで、私のテイはないんですか?」
早速ハンナの書類を作るスズさんに、僕は金色の甘い香りがするテイを差し出した。
――◆◇◆――
早朝の晴天に糸車に巻かれる獣毛のような雲が浮かぶ。
西区の演習場にある
目的地は遠征の集合場所である、地下祭壇への階段をふさいだ巨大岩があるこの場所だ。
以前救援に向かった時は多勢に無勢だったけれど、本来の彼らは皇国の攻撃の要だ。
その威風はさすがと言わざるを得ない。
「では団長。空からの地図に合うように、一騎と一人で組み、担当区域における詳細な地図を作成する事、承知いたしました」
いつもは柔和な表情のポールがちょっと顔を引き締めて、後ろの部下と共に敬礼してくる。
手の平を胸の前で突き出す感じのそれについてはもう何も言わないことにした。
「うん。もう一つの指示についても、ぼんやりして申し訳ないけど頼むよ」
「この巨大岩のまわりみたいな雰囲気の場所を確認するんですよね? 植物の様子から、かすかに人の手が加わった事がわかります。怪しい所があれば地図に記すのでまかせてください」
にっこり自身に満ちた顔で笑うポール。
さすが専門家はたのもしいな。
この下にある地下祭壇のような遺跡が他にもあるかも知れない。
地図作成のついでにその調査もすることにしたのだ。
祭壇自体が法具みたいな遺跡は他に聞いたことがない。
コリー達元第五小隊が道路敷設をする際に掘り返して発掘品があるか確認してもらう。
祭壇への扉が見つかれば、あとは僕の仕事だ。
もらえる血殻の柱と、周辺の貴重品もぜひ回収しておきたい所だ。
そんな事を考えていると駆け足で登ってきたハンナが到着した。
後ろには騎馬武者が下馬して整然とならんでいる。
「団長、兵種長に戻していただいて、ありがとうございます! 今回の任務、必ず成功させますので、期待して待っていて下さい!」
おう、気合い十分だな。
例え魔獣の巣があっても重装騎馬隊は不意打ちされなければ安全に対処できる。
そして不意打ちは優秀な斥候隊が一緒にいるのであり得ない。
「うん、期待してる。行程表にあわせた区域にオルミナさんが来るから、定期報告書を忘れずに用意しておいてくれ」
「わかりました。出発するぞ! 総員、団長に敬礼!」
各隊の人員が組み、徒歩で出発していくのを見ながら僕はアルバトロスの事を考えていた。
グランベイの拠点を維持するためのギルドとの約束、領都の拠点と第三十字街との往復。
クローリスの出張などの移動。飛行戦力として試作銃器をつかった訓練……
最近アルバトロスもオーバーワーク気味なんだよな。
でもこれはスズさん以上に替えが聞かない。
第八がスカウトに成功したっていう竜使いの状況を確認する必要があるな。
――◆ 後書き ◆――
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
竜使いの傭兵達をどう登場させようか頭を悩ませているところです。
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