第24話 ギルド加入の検討
翌日訪問して話を聞きに行ったところ、加入金は無しから金貨100枚まで振れ幅が大きかった。
加入金無しのところはカイルにとって良い条件だが、話を聞いていると何かビムレスの時のように裏目的がありそうだと感じた。
確証はないがカイルの直感が怪しさの警鐘を鳴らしたので候補から外した。
ここでカイルは最初興味本位で調べていたのが、今ではどのギルドに所属しようか考えている自身の感情に気付いた。
行商人は続けたいが、安定収入は魅力であり、大きな仕事も経験できる。
その経験はアイリスの父親が話していたようにきっと自身の将来に役立つ。
しかし、行商人の時のように自由行動はできなくなる。
今カイルは、ここを天秤にかけて検討している。
(行商人を続けるか、ギルドに所属する商人になるか。まだ判断するには情報が不足している)
手持ち資金は金貨換算で25枚である。
残りの七ギルドの加入金は金貨20、30、40、55、60、80、100枚であった。
今すぐ加入できるのは金貨20枚のところだけである。
少し貯めれば30枚に手が届く。
55枚以上は貯めるまでに時間がかかりすぎるので除外した。
それらを考慮した結果、最終候補を20、30、40枚の三ギルドに絞り込んだ。
(後は、この三ギルドの比較だな)
カイルはまだ決めあぐねているため、明日もう一度話を聞きに行くことにした。
翌日早朝、各ギルドへ知りたいことを確認しに行ったが、聞いた説明ではあまり大差がないように思えた。
毎月の収入もほぼ同じであり、仕事内容は所属するまで詳細はわからないがどこも似ている。
そうなれば比較はギルドが解散せず存続すること、ギルド内の雰囲気が良く働きやすいこと、そして最後は自分の直感を信じることになる。
カイルは30枚の加入金が必要なギルドの長、マグロックと話した内容を思い出す。
他の二ギルドはどこか他人行儀な印象を受けたが、マグロックからは親しみやすさを感じた。
それに最も気に入ったのがギルドから抜けたい時はいつでも抜けていいと話していたことだ。
(まずは金貨30枚集めてみるか。最終決断はそこで下そう)
ギルドの選択がまとまったところで、次にどうやって金貨を貯めるか考え始めた。
行商人なので商品売買で稼ぐのが一番手っ取り早い。
しかし、カイルはこの機会に依頼受付所の依頼を受けてみようと思案していた。
現状はFランクなので、いくつか依頼を達成することで次のEランクまで上げておく算段である。
明日の行動は依頼受付所に向かうことに決めた。
二つある依頼受付所の宿から近い方に来ていた。
ここは人気なのか建物の中には多くの人が各々の目的で集まっていた。
人が多くなかなか受付が空かず、掲示板の隣に備え付けてある椅子に座り順番を待つことにした。
一時間ほど待ったところでようやく順番が回ってくる。
係りの人と話し、現在募集中の依頼リストを見せてもらう。
今すぐにでも受注できそうなのは、王都近郊にある洞窟でのFランク調査依頼だった。
(初めて受注する種類の依頼だな。これにしてみるか)
依頼は地質学者からのもので、ダンジョン最下層の地層にある土を採集してきてほしいとのことだった。
ダンジョンはモンスターも確認されておらず、安全なのでただ土を回収してくるだけの依頼になる。
カイルは準備を整えるとダンジョンに向かった。
ダンジョン探索中に放置してある馬車が盗まれる可能性があるので宿に保管したまま徒歩で向かう。
目的地までは片道で三時間ほどかかった。
早朝から行動していたので、時刻はまだ午前中である。
緑の草原が広がる場所に小さな丘があり、その斜面にぽっかりとダンジョンへの横穴が口を開けていた。
カイルは持ってきたたいまつに火をつけて内部に入る。
通路は人間二人が十分すれ違える幅があり思ったよりも広く、天井までの高さは身長の2倍ぐらいだった。
奥に進んでいくと坂になっていき、道幅も徐々に狭くなっていく。
途中分かれ道があったが事前に見取り図をもらっているので迷うことはない。
現在地を確認するため、たいまつの明かりを見取り図に火が燃え移らないよう気を付けながら近づける。
確認するともうすぐ最深部に着くところまで来ているのがわかった。
最深部まで来ると、とても開けた場所に出る。
たいまつの火が照らせる範囲しかわからないので、実際どれぐらいの広さなのかは不明だった。
カイルは土を採集する前に周囲を歩いてみたところ地底湖と思われるものを発見した。
その他は特に目立つものもなかったので、土の採集作業に取り掛かる。
すると突然、カイルの顔を液体状の何かが覆った。
(なんだ? くっ! 息ができない! モンスター? スライムか!)
スライムは物理攻撃の威力面で脅威はないが、対象の顔に覆いかぶさって呼吸をできなくして窒息死させるのが主な攻撃手段である。
水辺に生息しているおり、水を飲もうとしたした者や近づいてきた者に襲い掛かることがある。
今回のようなFランク依頼で遭遇することはない。
カイルはスライムを手で引きはがそうとするが捕えどころがなく、うまくつかめない。
両手でも試してみるが結果は同じであった。
今度はダガーを抜いて必死に抵抗しようとする。
液体状のモンスターに対して刃物で対抗するのは相性が悪い。
そうは理解していても他に手段はなかった。
スライムを引きはがそうと格闘しているうちにカイルの視界が徐々に白くぼやけていき、意識が失われそうな感覚になる。
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