第11話 ねこ

さっきまで平等に過ぎていく時間は、片方だけ奪われた。

だからといって自分の時は止まることはない。

止まった『時』に、立ち止まる事も戻る事も許されるはずもなく、偲んでも顧みても時間は無常で無情なのか。

いや、時間は無常ではなく常(つね)である。常為らざるものは人の営みで、ゆらゆらと川面に揺れる木の葉のように不安定なのは人の心。

涙も出ない悲しみは、堰を造って少しずつ水嵩が増し、決壊してしまった時に立ち直る事が出来るだろうか。

涙の代わりに言葉に込めよう、澱が留まる前に。少しずつ流してゆこう、溢れぬように。

きっと終わった方は何も無く、本当に何もかも無くなってしまうだけで、残された方だけが途方に暮れたり、悲哀に暮れたり、勝手に背負ったりする。

終わった方は何も望まない、望む事も無い、あるのは過去と記憶のみ。

残された物はその過去を未来へと一緒に持っていく事は出来ない、その記憶に縋りつく事だけ。.

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