83.本番間近 三

 神社は山の斜面を切り開かれて築かれている。広大な三層の境内をもち、それぞれの階層は石段で繋がれた構造だ。

 搬送開始から二時間、和太鼓はすべて社務所の倉庫へと運び込まれ、今日の作業は終了となった。

 これ以降の練習は、夜間や早朝の時間帯など、準備作業の合間を縫って行われることになっている。


「なんだか、懐かしいですね」


 本殿の石段に腰を下ろして休んでいると、千佳が隣に座った。


「懐かしい?」


 境内では、すでに屋台の設営作業が始まっている。まだぽつぽつといった具合だが、明日明後日には屋台街が出来上がっているだろう。


「その、今年は小湊さんや須藤さんも一緒だったので」


「そうか、そうだな」


 これまでは二人きりだった。青年団のサポートも二人でやっていたし、学校の友達が一緒にということは今までに一度もなかった。


「嫌だったか?」


「いえ、楽しかったですよ。玉子串も楽しみです」


「よかった」


 小湊さんや須藤の参加は流れで決まったものだったが、千佳が楽しんでくれていたようでほっとした。


「それでその……お祭り、誘いました……?」


「? ……誰を?」


「その……、です」


「? ごめん、聞こえなかった」


「ですから、……です」


「? もう一回言ってくれ」


「~~、っ小湊さん! です……」

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