3章
27.和太鼓演舞 一
「祐司さん、そろそろですよ?」
昼前の時間帯。無人駅のホームで千佳と待っていた。
定刻通りにホームにやってきたワンマン電車から、降りてきた二人組を確認し手を振った。
「よ、祐司っ!」
「こんにちは」
今日の目的地はここから近所の小学校だ。その体育館で和太鼓演舞の練習が開かれる。
「二人とも、いらっしゃいませ」
千佳が笑って出迎える。
着くまでもLIMEで確認していたが、降りる駅を間違えたら次の電車は三十分後。無事に合流できてよかった。
ここからは歩きで小学校へ向かう。
「それにしても周り田んぼばっかだなー、この辺!」
「まぁな。ちなみに小学校はほら、あの建物だ」
この駅は町の端をかすめるようにある。駅の東側は住宅街だが西側は一面田んぼになっており、小学校はそちら側にあった。
「あそこかー。ちなみに祐司と相楽さんの母校ってことだよな? なんであんな田んぼのど真ん中に建ってるんだ? 景色がいいからとか?」
たしかに絵になるが、そんな綺麗な理由じゃない。
「今は公園になってるけれど、昔は地区ごとに小学校があったらしいよ。生徒不足の統廃合で、新しく小学校を建てることになったんだけど場所決めで揉めたらしくて。結局、どの地区からも遠いって理由であの場所に決まったらしい」
「身も蓋もないな……」
地区によって遠い近いがあったら不平等とかなんだとか、そういう理由だと聞いている。
「ねぇ篠森、なんか聞こえない? もしかしてこれって――」
一定のリズムでドン、という重低音が聞こえてくる。
「あぁ、もう始めてるのか。うん、遮るものがないからここまで届くんだよ」
今はまだ小さいが、この独特の音は間違いない、和太鼓の響きだった。
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