13.深窓の令嬢 三

「ちなみになんて告られたんだ?」


「ちょっと恥ずかしいですね」


「言いづらかったらいいんだ」


 あくまで参考にというだけで、その辺はネットや雑誌とかいろいろあるし。


「いえ、そんな大層なことでもないんです。要約にはなりますが、真摯な姿勢に惹かれました、付き合ってください。みたいな」


 やっぱり嬉しげだ。告白の仕方については合格点だったらしい。


「私からもいいですか?」


「ん、どうした?」


「あの。こういう話を聞いてくることってなかったと思うんです。なにか心中の変化でもありました?」


 これまでは千佳とそういう話は避けてきた。周りにはやし立てられるから余計にそういう話がしにくくなった、という理由もあるが、そもそも男はあまり恋バナをしない。

 よく話すのはゲームや漫画、野球やサッカーといったスポーツのことで他人の恋バナはタブーみたいな空気になっている。

 俺と千佳の間のことも、クラスでは「またやってるよ」みたいなネタと化してるがあるし、さっきの須藤みたいに茶化しにくるくらいだ。

 実際に付き合うためにどうすればとか、そういうデリケートなところまで触れる話はしたことがない。


「まぁそうだな。いろいろあったんだよ」


 今回も須藤がフラれたというだけなら俺も何もしなかった。憂さ晴らしくらいは付き合うつもりでいたけれど、そうそう深いのは……須藤も傷をえぐられたくないだろうし、いつもどおりの馬鹿話が出来ればと思っていた。


「もしかして好きな人が出来ました?」


「……」


「ほんの冗談だったんですけれど。小湊さんですか?」

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