この世界を生きるとき、きみは。
ちいろ
第1話 最難関 クエスト窓を開けること
見える天井。やわらかい布団。当たり前の光景、これは目を開ければ必ず見るもの、感じるものである。それなのにそのはずなのにまだはっきり起きていない自身の脳が、一つの警告を鳴らしている。何かが違うと。この違和感を考えようと脳が思考するよりも早く感覚のセンサーがエラーを発する。この部屋は暑すぎると。瞬時に意識がそちらにスイッチする。まずは目先のことを解決しなければ、そう思ってのことではないだろうか。
体がべたべたしている。それだけでここが暑く、空気の循環ができていないことが理解できる。首をぐるぐると回転させ、感覚的に窓を探す。あった。一目散に駆け寄り、がらがらと音を立てながら窓を開ける。ついでに熱い空気から逃れたくて、首を窓の外にひょいと出してみる。
やわらかいそよそよとした風が頬をなでる。涼しい。顔を部屋に戻す。暑い。もう一度出す。涼しい。ここで一つの欲が生まれた。この部屋をより早く涼しくするには風の通り道を作ってあげればよいのではないか。再び窓を探して首、今度は体も使ってぐるぐると周りを見渡す。あいにく窓は今開けた一つしかない。その代わり面白いものを見つけた。横にスライドできるこの形これは扉だ!瞬時に開けてしまおうという気に駆られる。同時になぜだかわからないけれど心なしか心臓の鼓動が速くなった気もする。でも気になる。これが怖いもの見たさ。というものなのだろうか。
よし覚悟は決まった。扉の取っ手に手をかけ思いっきり横にスライドする。
‘‘ガラガラガラガタン‘‘
開いたと同時に、熱気がむわっと顔に張り付く。ただでさえ暑くてべたべたした肌に追い打ちをかけるこの熱気である。もうこの暑さには嫌気がさした。鼻で大きく息を吸い込み、吐き出す。これでこの熱気を食べてやったぜという気持ちになる。気持ちだけでも涼しく・・・ね?
いやいやそんなことは置いておいて今は窓だ。まだこの熱気に飛び込む勇気が出なかったので顔だけ動かして目標物を探す。左・・・は階段だ。それ以外何もない。右は・・・そう思ってなりゆきに身を任せ右を見る。そこには真っ黒な闇が広がっている。さすがに・・・あっちは行きたくないな。よし見なかったことにしよう。都合の悪いことはひとまず忘れておくことにする。あれ?目標の窓なくない?一気にテンションが下がるそして見つけた一つの窓にすがりながらこの家の構造について愚痴を言ってやろうかと考える。とぼとぼと窓に向かって歩き出す。帰りざま振り返った扉の先にはカーテンに覆われながらもキラキラと光る
ーーー
なんだー真正面にあるじゃん今気づかずに帰るところだったじゃん下がりかけたテンションは一気に元に戻る。なんなら以前より高くなっている。鼻歌交じりに窓に向かって歩き出す。そして部屋を飛びだ・・・あれ?飛びだっ・・・せないんだがこれはどういうことだろうかなワトソン君。窓は目と鼻の先。なのに足がっ部屋から出ることを拒否しているんだ。ガンバレ!自分!極楽浄土は目の前だ。その足を踏み出すんだ!**!!・・・あれ?自分の名前なんだっけ。まあいいや。さあ部屋からの一歩を、一歩を踏み・・・外した。痛い痛い。これは足を捻ったのでは??ぐわぁぁぁ。地面をのたうち回る。部屋から出ていることを気づかずに。
・・・数分後。足を腫らせながら足をさする自分がいた。落ち着いてきて気づくことがある。そして先に言っておくが世の中には知らないほうが幸せってものも身近に結構存在しているらしい。ココ、ヘヤノナカジャナイ。そう考えてしまったのが、運の尽き。胃から食道を伝って這い上がってくる何がが・・・できるなら部屋に飛び込みたかった。でも今は重要なミッションを持っている。そう窓を開けること。足の痛みはなんのそのすくっと立ち上がり、カーテンとレースカーテンを2つまとめて右手左手に持ちさながらマントを翻すときのようにバサッと開ける。そして窓を開けると、地下シェルターに飛び込むかのように、部屋にダイブした。一瞬扉も閉めたい衝動にかられたが、それでは命を費やした意味がないことに気づきやめた。そして扉付近には近づかないように決めた。どうやら自分は、部屋から出られない体質らしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます