Conlanging 架空言語関連
アーヴ語について(「小説を書く上での架空世界の言語設定について」より転載)
アーヴ語は星界シリーズに登場する人工言語だが、完成度が非常に高い。
例えば、第一巻の食事シーンにこんな言葉が出てくる。
「オートン・フィフェマル」という字面だけ見ると日本語とは全く関係ない独自言語のように見えるが、これは実は日本語の『うみがめ』と『あつもの』を音韻変化させたものなのだ。
atumono → autonn /ɔton/オートン 「あつもの」
umigame → fimhaimec /ɸiɸɛm/ フィフェーム 「うみがめ」
これだけ見るとなんだかわからないのでもう少し詳しく。
アーヴ語は未来の日本語という設定なのだが、古代語である日本語をかなり規則的に変化させて作られている。
子音に関しては調音部位が近い別の子音に置き換わっている。
(Note:しかし「ヤ行」は「ガ行」になり、「ガ行」は「ハ行」、「ハ行」は「カ行」、「カ行」は「サ行」になるという具合で、一部の子音だけではなく全て平等に入れ替わってしまっているので、正直もはやグロンギ語やアルベド語などと大差ない感じである)
例えばアーヴ語で「山」はガーフ(gamh)というが、「ヤマ」の「ヤ」が「ガ」になっていることがわかると思う。
でも、後ろはどうして「フ」なの? と思った方も多いと思う。
まず、アーヴ語では同じ母音が二つ連続すると後ろが脱落する(子音は元の単語の発音のまま変わらない)。-a-aという感じでaが二つ連続する場合、後ろのaがなくなり、-a-になる。
jama > gama > gam
※発音記号でjはヤ行を表す。jamaはジャマではなく「ヤマ」
そしてここに、名詞の主格を表す語尾-h(名詞の型によって四種類あり、「あつもの」の場合-n、「うみがめ」は-ec)を付け加えると、gamhになる。アーヴ語ではmとhが並ぶとfのように発音されるので、これでようやく「ガーフ」になるというわけ。
母音に関しては現代日本語よりもかなり増えており、一音節目と二音節目で違う母音が並んだ場合は後ろのもの前に移動して融合し、現代日本語のアイウエオ以外の母音になる。
先ほどの場合だと、「あつもの」のatuはuが一つ前の音節に移動してautになるのだが、このときaとuがくっついて、ɔという母音になる(英語のtalk /tɔːk/ など)。この音はカタカナで転写すると「オ」である。
そして「うみがめ」の「がめ」の部分もgame > haim(-ec) ヘームのような発音になるが、これも後ろの母音eが前に移動してaとくっついた結果ɛ(英語のget /gɛt/など)になったからである。
(
さらに文法について言うと、アーヴ語はA+Bの属格でBのAという意味になる。つまり語順が日本語と逆で、autonn『あつもの』の方が先に来る。そして、fimhaimec、フィフェームを生格に格変化させると後ろが-erになり、フィフェマルになる。
autonn fimhaimer オートン・フィフェマル
【語順】あつもの・うみがめ(の)
→海亀の羹
このように、母音や子音だけでなく語順も入れ替えてアーヴ語はできている。
ほかにも自走鞄ダグボーシュは『ながもち』、皇族ファサンゼールは『わかんどおり』、思考結晶ダテューキルは『なづき(脳の意味)』、猫の名前『ディアーホ』でさえも実は『ニャーゴ』という擬声語だとかあげるとキリがない。
これに気がついて、私は『星界の紋章』に出てくる語彙の語源を調べては、パズルのように楽しめるようになった。
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