遠雷

大きな音がして 家の中が明るくなる


木の戸が揺れて 風が入る


慌てて寝床に入って 母の傍で丸くなる


夕飯に食べた鉤汁の 淡いにおいがする


母のお腹を触ると 大きく張り詰めている


どーんと どーんと どんどんどんと


また雷がどこかに落ちる


父はそれを ほうじょうのしるしだと云う


遠く 山の向こうの雲の上


りゅうが子どもを授かっているのだ


子どものために 地を起こすのだ


目をぎゅっとつぶっても 耳をぐっとふさいでも


ぼくは りゅうに起こされる


ぼくの村に 雨が降る

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