第209話

 サーティスは体中に渦を発生させて僕達に体当りしてきた。でかい分動きが遅いが、逃げるだけでも一苦労だった。

「リアヌス、上に逃げよう!」

「ああ、私に掴まれ!」

 僕達は上空に移動しながら、魔法を打ち込んだ。サーティスは微動だにせずこちらをみていた。

「追ってこない…」

「様子が変だな…」

「まさか…魔族の国に!?」

 僕は急降下しサーティスの顔面めがけて、闇の力をチャージした剣を叩きつけた。そのおかげで、サーティスの口から放たれた巨大な水流はなんとか海の中に消えた。

「今のは少し痛かったよ…。でも、二度目はないよ」

 僕はサーティスの頭に乗っていた。サーティスは巨大な水を口の前に生成していた。

「やめろ!」

「特等席でみるといい。君の仲間たちが海に沈むところを! ぐっひゃひゃ!」

「やっ、やめろー!」

 僕が叫び声をあげると、サーティスは突然苦しみだした。

「ぐっ、なっ、なんだ! これは…。ぐっ…」

 巨大な水は海に帰り、サーティスの巨体が揺れだした。

「…どうしたんだ? って、うおっと!」

 リアヌスは僕の体を持って、空中に飛んだ。

「急に苦しみだしたな…。君がなにかしたのか?」

「いや、俺じゃない。リアヌスじゃないの?」

「いや、私ではないが…。…ん? …どうした、急に頭を抑えて? ダメージでも受けたのか?」

「いや、妙な声が聞こえるんだ…。この声は…」

「…アル! 聞こえるか!?」

「シッ、シオンさん!?」

 僕は辺りを見渡したが、どこにもシオンさんはいなかった。

 …気のせいか? でも、今の声…。

「気のせいじゃない! いいか、よく聞いてくれ。今、精霊の力を借りて君に話しかけているんだ!」

 …精霊の力? そんなことが…。

「シオンさんが無事でよかったよ…。でも、シオンさん、ごめん。今、それどころじゃ…」

「私は今…この大蛇の中にいる」

「…はっ、はあ!?」

 僕が驚いていると、リアヌスは辺りをキョロキョロと見渡していた。

「確かにどこからか聞こえてくるな…」

 どうやら、僕の幻聴ではないようだ…。

「シオンさん、なんでそんなとこに!?」

「好きで入ってわけじゃない。飲み込まれたんだ。今、ルア君やドワーフ達と一緒にでようとしているんだが、君の協力がいる。こいつの腹をみてくれ!」

「…腹? なにか光ってる…」

 サーティスの腹をみると一部分が、青く輝いていた。

「そこに強力な一撃を入れてくれ…。チャンスは一回だ!」

「どっ、どういうこと!?」

「私は中からみている。君の攻撃に合わせて私達も内側から攻撃する。早くしてくれ! どうもこっちの構造が変わっていってるんだ!」

「早くって…」

 リアヌスは僕の体を離した。

「話しはわかった。君はそこでチャンスをみて攻撃するんだ。私がサーティスの相手をする。…さて、いくか!」

「ぐっ…。くそがぁあああ…。腹の中になにかがいる…」

 リアヌスは赤いオーラを輝かせて、高速で移動しながらサーティスを攻撃をしていた。

「……」

 強力な一撃…。

 僕は鎖をみていると、ステータスは僕に話しかけた。

「…開放しますか?」

「…ああ。サポート頼む…」

「了解しました…」

 頼む…。奴を貫く強力な一撃を…。この俺に…。

 僕はそう願いながら鎖を握り、思いっきり引っ張り鎖を外した。すると、以前の色と違い腕からは赤いオーラを発し、それは僕の中心で緑色のオーラと溶け合いドス黒いオーラとなっていった。

「なんだ…。これ…。…ニーズヘッグ?」

 先程とは比べられないほど、強い力を感じた。だが、それと同時に体中に異変が起きかけているのを感じた。

「こっちもチャンスは一回か…」

 僕は剣に力をチャージしていった。全ての力を…。

「くっ、くそがぁあああ…。もう少しで中にいるやつを! リアヌス、邪魔をするなぁあああ!」

「…アル! 早くしろ! 火力をあげているぶん、こっちもあまりもたんぞ!」

「わかってる!」

 もう少し…。もう少しだ…。

「…ぐぅああああ! くっ、くそ…。死ね、リアヌス!」

「ぐっ…」

 リアヌスは吹き飛ばされ、勢いをなくしてしまった。だが、サーティスも反動でよろけていた。

「…いまだ!」

 僕はサーティスの青く光る腹めがけて剣を叩き込んだ。すると、闇のようなものがサーティスの腹に吸収されていった。

「ぐっ…。…ん? …なんだ? …今の攻撃は? 全く、痛くないぞ?」

 サーティスはダメージを食らってないようだった。

「なっ!?」

 確かに食らわせたはず…。

「ぐひゃはははは…。ふぅ…。やっと中にいる奴を消せたようだ…」

「なんだと…」

 サーティスの腹をみると青く光っていた箇所が、小さくなっていった。

「さて…そろそろフィナーレだ…。最高の一撃でとどめを刺してやろう…」

 サーティスは巨大な体をくねらせた。

「…くっ!」

 ここまでか…。

 そう思った瞬間にサーティスの腹が、とんでもなく青く輝き始めたかと思うと、風船のように膨れ始めた。

「なっ、なんだと…。ぐぅ…。バカな…。力が制御できなぁあああい…。ぐっ、ぐっああああああ!」

 サーティスの体が爆発したかと思うと、巨大な身体は一瞬にして氷漬けにされ海中に沈んでいった。

 

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