第81話

 なるほど…。なんでも入るバックというのは、この世界でも珍しいんだな…。補助魔法器具なんてものがあるから、てっきりあるのかと思っていたけど…。まあ、なにはともあれダンジョンに行くか…。

「さてと…。みんなの準備が整ったみたいだし、今からダンジョンに行こうと思う。…いいかい?」

「うん!」

「ええ!」

「おう!」

 猫たちは元気よく返事をした。

「…よし! 行こう!」

 …準備完了。…出撃だ。

 僕たちはそれからノスクの案内通りに進み、山を越え崖を登り洞窟を通り、なんとかダンジョンにたどりつく事ができた。


「…やっ、やっとついたな。ここがネズミの王の墓場か…」

 周囲を見ると辺りは暗くなり夜になっていた。結局、ここまでくるのに半日近くもかかってしまったのである。モンスターはそこまでいなかったのに…。

「やっ、やっとついたにゃー。つっ、疲れたにゃー…。…ん? アル、なにみてるの?」

「ああ、すごい石像だなっと思って…」

 ダンジョンの入口を見ると、暗くてよく見えないがニ体の大きな石像が立っていた。

「ああ、これか…。左側の猫はたぶん僕のご先祖様だよ。でも、ご先祖様に文句いいたいよ。この地図わかりづらいにゃー!」

「ああ、全く…その地図のせいで酷い目にあったな…」

「本当だにゃー!」

 なぜ到着するのにここまで時間がかかってしまったかというと、空を飛んで移動することができなかったのだ。ノスクの持っていた古地図はざっくりとした事が書かれていて、例えばこの岩が目印とかこの川が目印とか、正確な距離や方向がわからないクソ地図だったのである。まあ、簡単に遊び半分でこれないように、あえてそういうふうに書いたのかもしれないが…。

「みんな、大丈夫か?」

 僕は神様の装備のおかげでそこまで疲れていなかったが、猫達の様子を見るとかなり疲れていた。

「うっ、うん。ちょっと休めば大丈夫だよ…」

「だっ、だらしがないわね。わっ、私は今からでもいけるわよ…」

「おっ、俺もだぜ。よっ、余裕だ…」

 やっぱり疲れてるな…。流石にこのままダンジョンに入るのは難しいのかも知れない…。

「ノスク、ダンジョンの中はどのくらい広いんだ?」 

「うーん…。わかんないよ…」

 まあ、そうだろうな…。

「そうか…。…っていうか、なんでここにきたんだ? ここになにかあるって、ご先祖様の資料にかいてあったのか?」

「ううん…。なにもかいてなかったよ」

 ノスクは首を横に振りながら答えた。

「…じゃあ、なんでここにきたんだ?」

「現状、なにもヒントがないっていったよね? ほんとになにもわかんないからここにきたんだ…」

 マッ、マジか…。

 ノスクがそう答えるとアバンがキレた。

「ふっ、ふざけんなよ! わかんないって…。なんかあるからきたんじゃねえのか!?」

「そっ、そんなの僕が知りたいよ!」

「貴方達、騒がないで! 耳に障るわ!」

 まずいな…。疲労で皆のストレスが溜まっているようだな…。仕方ない…。あれをやるか。

「ストップだ! 喧嘩はやめて、みんな一列に並んでくれ」

 猫達は険悪な顔をして一列に並んだ。僕は先頭に立ったノスクの肩に手を置いた。 

 まずはノスクだな…。

「なにするの? アル?」

「…ん? 回復だよ…。…リカバリー!」

「なにそれ? …え? ふっ、ふっ、ふにゃぁあー!」

 ノスクは全身の力が抜け地面にバタッと寝っ転がった。なんかピクピクしていた。

「…よし、おわり! ふっふっふっ…。次はお前達の番だ」

「なっ、なっ!? おっ、俺は遠慮しとくぜ…」

「わっ、私も!」

 僕はニッコリと笑顔でゆっくりと近づいた。

「まあ、遠慮するなよ…。アバン…。…リカバリー!」

「うっ…。…だっ、だめだ、アルの旦那! こっ、これ以上は…ごっ、ごろにゃぁあーん!」

 アバンも全身の力が抜けて寝っ転がった。

「よし…。ルナで最後だ…」

「にゃっ、にゃにゃ!? わっ、私は大丈夫ですよ!? アッ、アル様!? …っていうか、ちっ、近づかないで下さい!」

 僕は怯えたルナにゆっくりと近づいた。

「大丈夫…。怖くない、怖くない…。…ねっ? …リカバリー!」

「…えっ? リカッ!? だめっ…。力が抜けてく…。でも…気持ちよすぎて…抗え…ない…。だめっ…。にゃっ…にゃっ…にゃぁあーん!」

「……」

 よし、回復完了だ…。すやすや寝てるし、次はご飯でも作るか。まあ、簡単な料理しか作れないんだけど…。

 僕は適当にバッグから食料を取りだして料理を作った。

「さて…この味付けはどれにするかな…。まぁ、これとこれでいいか…」

 僕はペロッと調味料をなめて、味を確かめながら適当にかけた。


 

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