第77話
僕がふと白猫の方を見ると複雑そうな顔をしていた。
「たしかにそういった事があったとは聞いています…。まさか、それが理由で英雄達…。いえ、皆さんは国外にでたのですか?」
…なんでこの子が謝るんだ? まあ、もう少し話を聞いてみるか…。
「…ノスク、どうなんだ?」
「多分違うと思うよ。僕の父さんは母さんと一緒に世界旅行中さ…。もう戦えないし…。まあ、最近はノル様と一緒になにかやってるみたいなんだけどよく教えてくれないんだ」
ノスクがノル様というワードをだすと、白猫は尻尾を振りながらすごく食いついていた。
「ノ…ノル様はお元気なのですか!?」
「うっ、うん! 便りによると元気そうだよ…。アルも最近あったんでしょ? どうだった?」
「元気そうだったけど…。なにかをしてるって感じじゃなかったけどな…。まあ、他の猫達…フォレス様とかジン様とかもなんだけど…」
僕は口元に手を当てながら、思い出した。
「そうですか…。でも、お元気ならよかったです…」
「…そういえば、ノスクの師匠のフォレス様ってなんの師匠なんだ? 剣の師匠とか?」
「違うよ。…さっきの話の続きなんだけど…聞く?」
僕は少し気になったので聞くことにした。
「ああ…。教えてくれ…」
「あの一件の後、僕は完全に闇に堕ちたんだ…。でも、そんな時…心の師匠フォレス先生と出会ったんだ」
ノスクは深刻そうな顔をした。
「…それで?」
「師匠はそれでもいいって言ってくれた。僕は…そんな優しい言葉が嬉しかった…。その言葉に救われたんだ…。僕が闇から帰ってこれたのは師匠のおかげなんだ…。本当に…本当に師匠からは沢山の事を教わったんだ」
…でも、ニャートからは帰ってこれなかったんだな……。
「そっか…。でも、まあ…いい師匠だったんだな」
「うん。師匠はいってた…。この国にいるだけじゃ…。これからは世界を知らければダメだって…。僕は最後に師匠とあった時のあの言葉が今でも忘れられないんだ…」
ノスクは感慨深い思い出を語ってくれた。
本当にいい師匠だったんだな…。少し羨ましい気もするな…。
「それで…なんていったんだ?」
ノスクは少し恥ずかしそうにして頭を掻いた後に言った。
「それはね…。まずはエルフの王国に行き…エルフのおんにゃの子にモフモフされまくってくるのにゃー。そして、僕はおんにゃの子の世界制覇するにゃー!…ってね」
「…クズ猫じゃねえか!」
「最低ね…」
「しっ、師匠はクズ猫なんかじゃないにゃ! ちょっとだけエッチなだけだにゃ!」
闇と決別する試練的なイベントかと思っていたのに…。なんかがっかりだな…。
「はぁ…とんだパラディンだな…」
「がっ、がっかりするにゃ! いっ、いわなきゃよかったにゃ。…ん? パラディンってなんだにゃ! まっ、まさか悪口かにゃ!」
「むしろ…いい言葉だよ。昔、やったゲ…。ごっほん…。昔、あった人で同じような人がいてね。闇に堕ちてたんだけど、パラディン…。つまり、闇と決別して世界を救ったんだ」
「かっ、かっこいいにゃー。今はどこにいるんだにゃ?」
ノスクは目を輝かせながら聞いてきたので、僕は自分の胸を指さして答えた。
「ああ…ここにいるよ…」
あのゲームは色々な意味で思い出深い…。ラスボス手前でセーブして次の日ゲーム機のスイッチを入れたら、オープニングが流れてきて泣きそうになったのは今でもいい思い出だ…。ダメなのはわかっているけど、現実を受け入れたくなくて何回再起動スイッチを押したか…。
「まっ、まさか…。しっ、死んじゃったのかにゃ!?」
「いや、生きてるよ…。今も…誰かの世界を救ってるさ…」
まあ、最近だとリメイクしてセーブデータが消えるなんて事はなくなったからいい時代だよな…。本当にあの頃のゲームは衝撃に弱かったなあ…。
「なんだかカッコイイにゃ…。それに比べて僕は本当にだめな猫だにゃ…」
いや…意外と似ているのかもしれない…。
「まあ、俺がいうのもなんだけど、ノスク以上にダメ人間だったよ…」
「ぼっ、ぼく以上に!? …ニャートだよ!?」
「うん…。でも、世界を救ったら帳消しだよ」
「そっか…。世界を救ったらか…」
さてと…。あとはさっきからずっとひれ伏しているこいつに声をかけるか…。
「おい、黒猫…」
「本当にすまにゃぁあい! ボスの知り合いなんて思わなかったんだぁああー!! 信じてくれ! 殺すって言ったけど、本当に殺すなんてこれっぽっちも思ってなかったんだぁああー!」
黒猫は思いっきり、僕に抱きついてきた。
「わかった! わっ、わかったから、抱きつくな! はぁ…はぁ…。やっと…離れたか…」
黒豹に襲われているみたいで普通に怖かった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます