第10話『勇者から手紙がきた』

「おお。ユータから手紙がきてる」



サトシは"トレードボックス"

を覗くとそこには、勇者ユータ

からの手紙が入っていた。



"トレードボックス"



一週間に一回しか使えないという

制約があり、なおかつリンゴの

大きさ程度の"無機物"しか転送する

ことはできないが、距離は無制限で

送ることができる超レアアイテムである。


主に、手紙のやり取りをするために

使われるものだが、金貨程度の

ものであれば送ることも可能である。



「妾の旦那さまを追放したパーティー

 の連中からの手紙かのぅ? 

 そんなモノは無視してもいいん

 じゃないかの? 妾の旦那さまを

 追放するとは本当に見る目のない

 連中じゃのう!」


顔を真赤にしてミミは怒っている。


「まあまあ。勇者のユータはいいヤツ

 だったからそう悪く言わないでやってくれ。

 あいつの冒険の支援は可能な限り

 してやりたいと思っているぜ」


「ふむ。……そういうものかのぅ?」



少しシュンとしながら

ミミが応える。



「でも、本音を言えばな、

 ミミが俺の代わりに怒ってくれるのは

 すっげー嬉しかったけどな!

 愛してるぜ、ミミ!」


「えっへん! 妾はいつでも

 サトシの味方なのじゃっ!」



そういってミミは小ぶりな

胸を突き出し、腰に手を置き

"えへんっ"と構える。



「それに、追放されたからこそ

 第二の人生でミミと出会えた

 ことを考えれば、むしろ今と

 なっては感謝しなければいけない

 くらいに思っているぜ」



サトシは照れているミミの

頭をガシガシと撫でる。



ミミは照れ隠しのためか、

とっさに別の話題にしようと

口火を切る。



「それじゃあ、特別に

 旦那さまの代わりに

 妾がユータとやらの

 手紙を読んでやるのじゃ」



*********************



拝啓、サトシ殿


サトシ氏、元気にしておりますか?

実は、拙者はあまり元気

ではないでござる(泣)


というのも、サトシ氏を追放する

ことになってしまってから、

クエストに苦戦することが

多くなったからでござるが……


先日も片足と顔半分を吹き飛ばされて

拙者あやうく死にかけたで

ござる。゚(゚´Д`゚)゚。


とは言っても怪我は

治癒術士のチユウ氏が

治してくれたのでサトシ氏は

心配する必要はないでござる(ฅ'ω'ฅ)​


残念だったのは拙者が

顔を吹き飛ばされたときに筋肉自慢の

ツチヤ氏は真っ先に逃げたでござるな(藁)


あのケンジ氏ですら膝をガクガクさせ

ながらもなんとか踏みとどまったのに

情けのない御仁でござるな(禿藁)


あの槌使いのツチヤ氏は

毎日毎日なんのために鍛えているのか

謎の人物でござるな( ´Д`)=3


おっと、閑話休題


拙者、サトシ氏がいなくなってから

というもの、いかに拙者たちが

サトシ氏に依存していたのか

思い知らされたでござる(反省)


とはいえ、心配ご無用(侍)


世界は勇者に任せておけば

大丈夫でござる(鬼)


むしろ、拙者はサトシ氏の

第二の人生を楽しんでくれている

ことこそ望みでござるよ!



哀れみの気持ちで、パーティーに

戻ってきてもらってはむしろ

拙者の立つ瀬がないでござる(●´ω`●)


サトシ氏はサトシ氏の新しい

人生を生きるでござるよ!

それが拙者の望みでござる。


まぁ……。


ケンジ氏、ツチヤ氏、チユウ氏を

説得することができずに

結果的に追放の決断を下したのは

拙者の責任ですから(滝汗)



すまぬでござるな……。


本来は、遠くで苦労している

サトシ氏を慰めるための手紙

だったのでござるが、拙者の

ことばかりになってしまった

でござるΣ(´∀`;)



しめっぽい話をしてまったで

ござる。それではパーティーの

近況を書くでござるよ。



ツチヤ氏は、怪しい筋肉増強ポーション

の使い過ぎで最近は逆にガリガリに

なってきていて怖いでござる(*^▽^*)


最近はマックシングし過ぎていて、

「おいおいおいおい 死ぬぞアイツ」

感がハンパないでござるよ(暗黒微笑)



チユウ氏は『サトシおじさんに

言いすぎてごめん』と泣きながら

謝っていたでござる。


背伸びしていてもまだ10代前半の

子供なのでサトシ氏に対して

心無いことを言ったことを

許してやって欲しいでござる(´・ω・`)


ざっとこんな感じでござる。

ケンジ氏の近況? はて。


とにもかくにも、サトシ氏も

第二の人生大変だと思うでござるが、

頑張るでござる٩(๑òωó๑)۶


そうそう、少ないけど

大金貨3枚を同封したでござる。

新生活に役立てて欲しいでござるよ!


追伸


ギルド受付のコノハ嬢とケンジ氏が

くっついたとのこと(# ゚Д゚)凸 FAXファックス


追伸2


四天王の一人魔神将ドヴォルザークが

ハジマリーノ村の方に大部隊を従え

進軍したとの情報があったでござるので

もしそっち方面に向かっていたら

気をつけて欲しいでござる。


                草々



*********************



「四天王のダルビッシュとやらは

 俺が土葬したから良いとして

 コノハちゃんケンジと付き合ったのか」


「ぬぅ……。コノハとやらは

 旦那さまの"もとかの"

 とやらかのう?」


「いやいや、違う。

 俺が王都でお世話になった

 ギルドの受付嬢だ」


(まぁ。ぶっちゃけ、王都最後の

 日にデートなんて言うから

 一瞬、誤解しかけたけどなっ!)



「どうやら、旦那さまの顔を見ると

 嘘はついていないようじゃの。

 この"ないすみどる"の良さを

 理解できぬとは王都にいる

 女子は見る目がないのじゃな」



危険と隣り合わせで平均寿命が

地球ほどは長くないこの世界では

年上の男性を恋愛対象にみれない

女性が多いのは仕方のないことであった。


むしろミミの感性が特殊

だったと言えるであろう。



「まぁ、あの子にとっては俺は

 亡くなった父の代わりみたいな

 感じだったんだろうな。


 まあケンジもアホだけど、悪人

 ではないから、彼女ができたのを

 期にマシになればいいとは思うけどな」



「むう。サトシから他のおなごの話は

 聞きたくないーのじゃぁー!」



足をジタバタさせながら

顔を膨らせて怒っている。



(かわいいやつめ)



「はは。分かったよ。

 それにしても大金貨三枚も

 貰っちゃたからお返しをしなくちゃなぁ……

 ミミ、何が喜んで貰えるかな?」



「ふぅむ……。手紙を読む限り

 顔が半分吹き飛ばされたり、

 片足を吹き飛んだりしている

 ような危険な戦いに身を晒して

 おるようじゃの。それなら

 戦力になるようなものを

 送れば喜ばれるんじゃ無いかの?」



「なるほど。いいアイディアだな。

 問題はこの"トレードボックス"

 トマト位の大きさの物しか入らない所だ。

 剣とか入れられないしなぁ……」


「武器や防具は大きいから

 無理じゃの。例えばじゃが

 サトシの作ったゴーレムとか

 を小型化して送ってみたらどうかの?」


「おお……! そりゃ

 ナイスアイディア!

 さすがはミミだ!」 


「えっへん。なのじゃ!

 ウ・ラヴォースを討伐して

 手に入れたダンジョン・コアと

 融合させたゴーレムなら

 サトシの魔力や距離に影響されずに

 無尽蔵に動くことができるのじゃな」



「いいね! さすがは元世界樹! 

 ゴーレムなら俺の代わりの

 戦力になりそうだ」


「旦那さまは、その小さな

 トレードボックスに納められる

 ほどゴーレムを縮小できるかの?」


「とりあえずやってみるか!

 「縮小スモール」「自律エゴ」「強化エンハンス」」



二メートル大の石の巨人が

リンゴと同じくらい小さくなる。



「おお、さすがは妾の旦那さまじゃの」


「あんまり自信はなかったが

 なんでもやってみるもんだな!」


「ところでそんなに小さくても

 戦力的に大丈夫なのかの?」



「"自律エゴ"である程度の判断力が

 ついているから大丈夫だ」


「ほう。そのゴーレムはどの

 程度の判断力があるのじゃ?」


「具体的には人族の三歳児程度の

 知能はある。転送先でかってに

 土を吸収して大きくなるさ」


「それなら安心そうじゃの」



「それじゃあ、俺の書いた返事の手紙と

 大金貨の御礼のゴーレムを送って

 やりますか。頑張れよ、ユータ」



ユータが幸せになれるように

祈りつつ、手紙とゴーレムを

トレードボックスに納めるのであった。

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