第7話 Spring Is Here 風景を食む

風が強いから洗濯物を追いかけて

綿毛が背中を撫でていく、さよなら

踏みぬいてしまいそうな青い草地を

蛙が春へと飛んでしまったから


ひとりきりで立ってます


スイカズラの甘い蜜を分けあって

いたのはまだ、雛鳥だったころで


朝陽のたびに同じ太陽に手をかざして

庭の草葉の陰で死んでいく鳩を看取った

あそこにはほら、綿毛をなくした、花


それでも、花、でしょう


壊れてしまっても万華鏡はきれい

クルクルとまわりながら温かな洗濯物を

抱きしめて後ろ向けに、落ちていく


懐かしい春という春の風のなか

ひとりきりの、みじかい、旅路で

私の手にはまた皺が刻まれた

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