第92話 奈緒ちゃんは不機嫌。
「おかえりー!どうだった、マリアちゃんとのデート!?」
母親が帰ってきた俺達を出迎えてくれる。
イヤにニヤニヤしてるな。
「ただいま、楽しかったよ!はい、お土産! あれ?奈緒ちゃんは?」
いつもなら出迎えてくれる、奈緒ちゃんの姿はそこには無かった。
「奈緒ちゃんは一緒に行けなかったから、自分の部屋に籠城しちゃってるわ。キョウちゃん、話してきてあげたら?」
また母親は俺をドロドロの世界に巻き込ませようとしてるな……。てか、籠城って……。だからニヤニヤしてたのか。
俺達は奈緒ちゃんの部屋に向かう。
何か、廊下にダンボールやら荷物がやたら置かれてるな。なんだこりゃ。
「奈緒ちゃん、ただいまー。」
廊下を歩きながら奈緒ちゃんの部屋に向かって声を掛ける。
すると、少しだけ部屋の扉が開き、銃口がこちらを向く。
バララララ!!
「痛た、痛い痛い!!一旦、撤収!」
取りあえず、俺と湯川さん、マリアは俺の部屋に隠れた。
「彊兵君、何ですか、アレは!」
「多分、俺がサバゲーで使ってたガス銃だ。P90だな。」
俺は、部屋に置いてあるガス銃を取り出す。
※良い子は絶対に無防備な人に銃を発射しないでね!
「奈緒ちゃんの顔が奥からチラッと見えたが、ゴーグルしてるから、多分、これで占拠してみろって事じゃない?」
俺は、銃をマリアと湯川さんに渡す。
「湯川さんはともかく、私は銃を使った事なんて無いよ?」
マリアは巻き込まれた事にご立腹の様だ。
『奈緒ちゃんを確保したら、マリアの言う事一つ聞くから。』
小声で耳打ちしたその瞬間。
「やります!使い方教えて下さい!」
マリアは一気にやる気を出し、俺の説明を一回で全て理解した。
※必ず、ゴーグルや専用のマスクを付けて安全に配慮してサバゲーをしましょう!
「よし、やるか。」
ふと机を見るとトランシーバーが置かれている。
「奈緒ちゃん、彊兵だよ。」
『私は今、怒っています!今から10分以内にこの部屋を占拠しなければ、先輩達の負け。私の言う事を聞いてもらいます。 もし、先輩達の勝ちならば、私が言う事を聞きます。』
なるほど。それで廊下に障害物として荷物を置いたわけか。 こりゃ、母親が味方したな。
『私にヒットさせたら占拠。先輩達は、弾が当たったら、『ヒット』と言って下さい。その人はアウト。残りの人で戦ってください。はじめ!』
「マリアと湯川さんはライフルだから、どんどん撃っては隠れを繰り返して下さい! 俺はスナイパーライフルで部屋から奈緒ちゃんを狙い撃ちます。」
「わかりました!行きましょう、マリアちゃん!」
結構、皆ノリノリだな。家ん中でサバゲーとか、普通なら怒られるからな……。
タタタタタタン!
タタタタタタン!
マリアと湯川さんは障害物に隠れながら奈緒ちゃんを狙い撃つ。
俺はバイポッド(二脚)を取り付けたVSR-10のスコープをうつ伏せになり覗き込む。
バンッ!
奈緒ちゃんの頭の右上を弾が通過する。
再度弾を装填する。
少しづつ湯川さんが距離を詰める。
さすがは元警察官。
俺も距離があるため、狙いやすい廊下に出ると、障害物に隠れる。
再度うつ伏せになり、狙い撃つ。
バンッ!
奈緒ちゃんはもう少しのところでかわす。
バララララ!!
湯川さんに弾が直撃する。
「ヒットー(泣)」
湯川さん脱落。
残るは俺の少し前にいるマリアと俺のみ。
「奈緒ちゃん、覚悟ー!!」
あー!マリア、一番やっちゃいけない玉砕覚悟ー!
バララララ!!
「ヒットしてしまいました(泣)」
P90の連射能力の前には、流石のマリアもどうにもならなかったようだ。
「残るは俺だけか……。」
単発しか出せない俺と、連射能力に優れた奈緒ちゃん。
俺は再度狙いを定める。
ーーーーーーと。
バラララララララ!!
弾丸の雨が降り注ぎ、敢え無く俺も撃沈した。
「やりましたー!私の勝ちでーす!」
奈緒ちゃんはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んでいた。
だが、この直後、皆で散らばったBB弾を片付ける羽目になったのは言うまでもなかった。
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