第28話 田崎の隠された力。
【同刻、マリア達】
私達が植物園を出ると、そこに立っていたのは先輩と田原だった。
「 なんであいつがここに……!」
詩穂も驚いているという事はやはり、 彼女は自分の意志でここまで来たのだろう。
「 早く先輩を助けないと……!」
私たちの先輩のもとヘすぐに駆けつけた。
先輩!田原、お前!」
「刈谷、テメェが渡したブツ、回収しに来たぜ。よくも裏切ってくれたなぁ?」
「マリア、刈谷。コイツは俺にやらせろ。」
先輩何を言ってるんですか………!?
「俺が許せないか?友情をふみにじられちゃったよー!ってか? ギャハハハ!!」
こいつ、ワザと先輩を煽って……!
「田崎、お前の本気を見せろよ。安心しろ、俺がお前を叩きのめすまで、バッグは取りゃしねぇ。それだけは誓うぜ。」
田原の言葉に先輩はバッグを植物園の出入り口付近に置いた。
私は取り巻きがまだ残っているといけないのですぐに自分が掴む。
先輩は本当にやる気だ…………。
「そう来なくっちゃな。本気でやろうぜ!」
「やる前に聞きたい。何故、石原側についた。」
「別にアイツの下に付いたつもりなんかねぇよ。 タダで女を味わえるんだ、こんないい事ねぇだろ!? それ以外に理由なんかねぇ!」
舌なめずりをする田原。
女性を性的欲求を満たす「道具」としか見ていない。下等生物!
「「最っ低…!!」」
こんなに気持ち悪い奴、 一瞬でも仲間だと思った私が恥ずかしかった。
「じゃあ、田原。俺はお前をもう二度と友人と思うことは無いだろう。」
先輩のこの言葉に悪寒が走る。
凄まじい殺気と肩に伸し掛かる重圧感。
覇気……先輩の指の先まで伝わる気迫。
「マリア、私だけ?」
詩穂も感じているんだ、この重圧感を。
体中をガクガクさせて震え上がっていた。
「いえ、私もです。」
私もたっているのがやっとだった。
「んじゃ、行くぜ!」
田原が右手を振り下ろす。 大振りのケンカパンチだ。
先輩は軽々とスルーした。あんなのが当たるわけない。
「バカめ!」
田原は直ぐ様態勢を立て直し、大きくジャンプをすると、先輩の側頭部を目掛け、膝蹴りを仕掛けてくる。
「…………。」
先輩は左腕で受け止めると、グルッと回転し、田原の左脚を背に向けると、右手ですかさず左脚を掴み引き倒す。
「…………うごっ!?」
体制を崩し、背中を打ち倒れる田原。
「立てよ、田原。まだ始まってもねぇぞ。」
先輩の殺気はどんどん増していっているようだ。
「…………くそっ!!」
田原が立ち上がったその瞬間だった。
ドドドドドドドドッッ!!
先輩が田原の腹に最早何発か分からない程、パンチを打ち込む。
「………ごほ、がほっ!!」
堪らず膝をついて、倒れ込む田原。
すかさず、先輩は田原のついた膝に右足を乗せると、左膝で田原の右こめかみを強打する。
ーーーあれは、プロレス技のシャイニングウィザード!?
まさか先輩も使えたなんて………。
モロに決まった田原はそのまま倒れ込む。
「ま、だだぜ……?」
ヨロヨロと立ち上がった田原の目の前には既に先輩はいない。
そう、先輩は既に田原の裏側にいた。
ズドッ……。
先輩の放ったレバーブローは腹の右側を裏から思い切り直撃していた。
ーーーーーー。
ドザッ………。
田原は白目を剥いてそのまま前に倒れ込んだ。先輩の圧勝だった。
目の前にいる先輩は、いつもの先輩とはまるで別人だった。
詩穂も何か全く違う人物を見ているかのような眼差しだった。
その後、誰かが警察を呼んだのだろう。
サイレン音が遠くから鳴り響いて来た為、先輩は田原を背負い、急いでこの場を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます