幼馴染で恋人の少女と異世界に召喚されて五年が経ちました〜今は嫁となった幼馴染と一緒に暖かで、平和な家庭を築いています〜

三日月

日記

 異世界転移。そう言われて胸の高鳴りを抑えられる男の子は、ほとんどいないだろう。


 その理由は、主に二つに分かれる。一つは、召喚されたときから既に反則級の能力を持っており、その能力を用いて女の子を次々惚れさせていき、ハーレムを築いていく……いわゆるというものをやりたいという理由。


 もう一つの理由は、自分の生きていた時代の知識を異世界で披露し、周りの人に認められていく……いわゆるをしてみたいといった理由だ。


 この他にあるにはあるのだが、俺tuee‼ したいとか、奴隷がいる世界で奴隷の女の子を侍らせてハーレムを作りたいだとかその様な願望ばかりで系統としては、どれもこれも上記に記されたものとの方向性は、ほとんど変わらないだろう。


 どうして世の男子がその様な事を思うかと言えばそれは、偏に現実に対してを持っているから。人間は等しく現実世界に不満を持っている生き物なのだ。


 自分は、こんな腐ったつまらない現実に生きていたって意味がない。自身が生きている意味が分からない。それならばいっそ異世界でチートな能力を貰って、幸せになりたい。そんな事を思うからこそ皆異世界に憧れるのだ。


 そこで一つの疑問が生じる。


ーーもし現実世界に対して何の不満を持っていない人間が、異世界にいきなり召喚されたらどうなるのか?


 その答えは、とても簡単だ。哀しみ、嘆き、怒り、憎悪。その様な人間だけが持ちえる様々な感情が胸中を支配する。

 

ーー何故いきなり自分はこのような場所に呼ばれた。自分に何をさせたいのか。何が目的なのか。早く元の世界に返せ。お前達を絶対に許さない。


 大体このような感情が胸中の中で激しく渦巻くだろう。その様な相手にチートな能力があるので、好きな女を抱き放題ですよ……だなんて言っても無駄だ。

 だってその人にとっては、そんな薄っぺらな物よりも前の世界の、自分の生きていた世界の生活が何より大切だったのだから。


 大切な物をいきなり理不尽に奪われて、怒らない者がいたらきっとそいつは、人間ではないのだろう。それこそフィクションの中にのみ存在するイケメン主人公君くらいだけだろう。


 少なくとも僕には、真似できそうにないし、そんな存在がいたら思わず吐いてしまいそうだ。


 そう考えるとよくある異世界転移物は、フィクションだということがよく分かる。その点では、そう言ったキャラの登場は、現実との区別をつけてくれるのでいいのかもしれない。


 本題に入ろう。僕がここまでこのような事を記してきたかと言えば僕が、ここ数日前に異世界に何の前触れもなく転移させられてしまったからに他ならず、僕の怒りを、嘆きをここに記そうと思ったからに他ならない。


 僕は紛れもなく幸せだった。暖かな家庭で、家族からの愛情を一身に受け、長年連れ添った幼馴染の彼女とつい最近付き合い始めたばかりだった。


これからいろんな場所に行って、いろんな事を経験して、ともに愛を深め合っていくはずだったのだ。


僕は、その日常を、誰しもが持ちえるそんなありふれた日常を、幸せを、僕は誰よりも、誰よりも噛み締め、生きていた。


 それなのに‼ そうであったはずなのに‼ どうして‼︎ どうしてこうなってしまったんだ‼︎


どうして僕のそんな幸せをこんな理不尽な形で奪われなくてはならなかったんだ‼ 


どうしてその事に、誰も答えてはくれない‼︎


お願いだから教えてくれよ......‼︎


どうして僕を‼ をこんな世界によんだ‼ 


どうして僕達の幸せを奪い、踏みにじったんだ‼︎


誰にも人の幸せを奪うという権利は、ないはずなのに、どうしてこんな事をした‼︎


僕は、こんな理不尽な目に合わせた存在を未来永劫絶対に許しはしない‼︎


みつけたら必ず殺してやる‼ 


相手が子供だろが、女だろうが絶対に許さない‼ 


絶対見つけ出して必ず息の根を止めてやる‼

                                 20〇〇年×月△日 星宮 風音ほしみやかざね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る