第48話 鋼の機神狼


「なんで異世界って何か起こる時に無駄に光を放つんだよ…」


 そう言った彰吾の目元にはいつの間にかサングラスが付いていた。

 今までの経験からどうせ光ると予想して以前から何かやるときの為に準備していたのだ。薄っすらと光出した段階ですでにかけていたのだ。


 しばらくサングラス越しに経過を見守っていると数分が経って、ようやく放たれていた力の波動や端から見える光が消えたのを確認してサングラスを外した。


「ふぅ…で、動作に問題はないか?」


 そして彰吾は軽く目をマッサージしながら目の前の機械狼に確認した。

 薄っすらと魔力の光を放ち、各所から水蒸気を吐き出すそれは確か作動しているのが見て分かった。なによりも彰吾の言葉に合わせて軽く足を上下に動かすなどして確認していた。


『異常なし』


 特に問題がなかったのだろうスピーカーのような機械音声で答えた。

 返事を聞いて彰吾は南進したように笑みを浮かべる。


「よし、発声機構も問題ないし四肢の動きも大きく問題はないな。武装はどうだ?」


 新たな質問を受けて機械狼は魔力を滾らせて動く。

 尻尾を軽く振るうと当たった地面が滅多切りにされたような跡が生まれ、口を開けば的に向けて蒼焔が放たれ、次には青い雷や冷気などが放たれ的はボロボロになって崩れ去った。


 最後に巨大な的に向き直ると背中のミサイルポットから小型のミサイルを数十打ち出した。的に衝突すると一つ一つが直径5mほどの強い爆発を起こし、煙が消えると巨大な鉄製の的は大きな罅を刻み崩れた。


『動作問題なし』


「ならいい。初にしては上出来だろう」


 そう言いながら彰吾は機械狼の周囲をぐるぐる回り観察して満足そうに頷いた。

 なにせ男のロマンを注ぎ込んだようなデザインの機械狼はロボットアニメ好きなら絶対に気に入るような見た目をしているのだ。しかもまだ改造する事が出来るように余白のような部分をあえて作ってあり、あとで合体する事も出来るようにしていた。


「やっぱりロボはいいな!向こうでも作りたかったけど、いかんせん部品が高かったからな~」


 幼少期に巨大ロボットのアニメを見てからの彰吾の密かな夢の一つだったのだ。自立軌道型や搭乗型ロボットを自身の手で生み出してみたい!と言う欲望はあっても、現代の地球では技術が足りなかった。

 なにより高校生でしかない彰吾には必要な部品や設備の為の資金が足りなかった。


 影で思いついた発明のアイデアを匿名で売って秘密裏に資金は用意していたが、匿名にしている分だけ若干足元を見られるので高額では引き取ってもらえなかった。

 ゆえにどんなに頑張っても後10年近くは計画を実行する事はできないと彰吾は考えていたのだ。


 それだけに現実として理想とも言えるロボをゴーレムとは言え作れた事に彰吾は少し興奮していた。


「う~ん!やっぱりカッコイイ‼」『鑑定!』


 もはや普段の怠さなどなく乗りで鑑定スキルを使用していた。


――――――――――――――――――――――――――――――――

名前:なし 種族:魔導ゴーレム:偽神狼 職業:機械神狼

レベル:1


力:A 魔力:S- 防御力:A- 知力:B+ 器用:B

俊敏:SS 運:B


スキル 《SP0》

頑強Lv1・尻尾術Lv1・爪術Lv1・噛み付くLv1・格闘Lv1・砲術Lv1・属性ブレスLv1・知覚強化Lv1


ユニーク

機械偽神狼の心臓


称号

作られし者・魔王の眷族・偽りの神獣・獣神の加護

――――――――――――――――――――――――――――――――


「……強くね?」


 乗りでステータスを確認した結果表示されたそれに彰吾は唖然とした。

 なにせ数値だけ見ても彰吾に匹敵するかそれ以上の強さなのはわかった。更にはスキルの保有数にユニークスキルも持っていた。

 クロガネですら初期はここまでの強さは持っていなかった。

 それだけに彰吾は少し現実逃避したくなったが、なんとか気を強く持って現実を受け入れる。


「すぅ……ふぅ……なんで俺は神獣を作ってんだ?」


 今回の件で彰吾が一番気にしていたのはその事だった。

 どんなに神に直接会っていようとも彰吾自身は神ではないのだ。そんな自分が作った物が『神』の文字を宿す存在を生み出せるはずがない。

 だとすれば理由はなにか?そう考えると表示されたステータスの中で関係している可能性の高いものは…1つだけだった。


「この獣神って奴のせいだよな…」


 加護は彰吾にもまだよくわかっていない事の1つだった。

 いくら勉強しても神の関わる事象は簡単には理解する事はできず、こっそりと神話などの関わる事は気にしていたがどうしても分からなかった。

 唯一わかったのは転生の神アズリスや死の神シルヴィア以外にも多くの神がいるという事だった。


 そのうちの1柱が獣神だった。

 でも、名称以外の情報はまだろくに調べていなかったから彰吾には正体不明の神が急に干渉してきた!くらいの認識でしかない。


「まぁ…強い分には困らないし気にしなくていいか。お前も別に気にしないだろ?」


『肯定』


「だったら今はいいか、この後他の仲間に会わせるから。その後にお前の役割決めるか」


『了』


「あとは名前だが…少し待ってくれ、しっかり考えて決めたい」


『了。楽しみにしています』


「おう!とびっきりの考えてやるから待ってろ!」


 機械偽神狼は基本単語でしか話さないが彰悟とは何故か会話が成立して、2人は楽しそうに話しながら訓練場を後にしたのだった。


 後に機械偽神狼を見たドワーフ達が興奮して大騒ぎとなってしまい、それを落ち着かせるのに必要以上に労力を消費する事になって…彰吾はしばらくの間ゴーレム製作に手を出すことを辞めるのだった。

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