傷だらけの償い
――――また、
「おかえり」
日付が変わって一時間を過ぎた頃。
遠慮気味に、玄関のドアが開いた。
「……まだ起きてたのかよ」
顔に沢山の傷を作り、服は血まみれの結翔がぶっきらぼうに言った。
「だって、結翔が心配なんだもの」
「余計なお世話」
「……かもね」
知ってる。
結翔がそんなもの、これっぽっちも望んでないことくらい知ってる。
でも、こうして出迎えるのは、眠いのを我慢して彼の帰りを待っているのは、私の自分勝手な罪滅ぼしだから。
これ以上失いたくないっていう私の自分勝手な心配だから。
結翔は気怠そうに靴を脱いで、私の脇を通り過ぎていく。
「……こんなことしても、
その言葉に、結翔は足を止める。
――――彩花。
私と結翔の大切な人。
もうこの世にいない、私たちの大切な人。
私のせいで、結翔のせいで、殺されてしまった、私たちの大切な人。
彩花が死んでから、結翔は喧嘩をするようになった。
守れなかったことを悔やんで。
力のない自分を恨んで。
そんな消えそうな結翔を私は見たくなかった。
結翔までいなくなるなんて、そんなの勘弁してほしかった。
だから、私は結翔を待っている。
これからもずっとずっと、待っている。
何をされても、何を言われても。
「…………んなことは、知ってる」
思い沈黙の中、私の言葉に結翔が応えた。
「そっか」
それしか、言えなかった。
「それだけ? 止めないの?」
「知ってるんだったら、いいや」
だって、それが結翔の償いの方法なら、私に止める資格なんてない。
「あっそ」
そう言って、結翔はまた歩き始めた。
私はその痛々しい背中をずっと見ていた。
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