聖願心理はショートショートを書くようです。

聖願心理

風が通る瞬間の

 ふわっと風が通る。

 それにつられて、髪の毛がなびく。シャンプーの香りが微かに鼻腔をくすぐる。

 その瞬間の、チョコミントを食べているような爽快感が私は好きだ。


 髪がなびく瞬間、全ての嫌なことが塵になって飛んでいく。

 あくまで“気がする”だけであり、その瞬間が終わるとまた“落ちてくる”。

 だけど、嫌なことがなくなって、涙の止まる瞬間があるというだけで、私は救われるのだ。


 いつか、本当に死ぬ間際でいいから、風に『ありがとう』と口づけをしたい。

 そんなことを思いながら、溢れた涙を拭った。

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