酉三刻(PM6:00)
「
ぽん
ぽん
ぽん
ぽん
ぽん
ぽん
こん
こん
こん
夕刻6時になりましたわね。ゆるゆるとヴィレッジおーたむを辞してきた光る君は渡り廊下から小走りでヴィレッジさまーを目指します。
「殿」
「弦一郎、どうした?」
源ちゃんズリーダの弦一郎登場でございます。
「かなり密なスケジュールですが、またアポが増えます」
「誰?」
「紫子さまでございます。お月見牛車ドライブデートをなさりたいとのことです」
紫子さまとはヴィレッジすぷりんぐにお住まいの光る君の愛妻でございます。
「うぉぉ、紫ちゃん! おっけー。弦一郎、スケジューリングよろしく! 紫ちゃんとドライブかぁ。今日はいい夜だなぁ」
「もう1件ございます」
「ん? 誰?」
「満月儀式でございます」
「おお! 藤ちゃん! そっか今夜は満月か。これはかなりハードな夜になりそうだな。でも弦一郎大丈夫だよな?」
藤ちゃん。光る君の初恋の君でございます。ちょっぴりビターな想い出でございます。
「はい。こちらで完璧にスケジューリングいたします」
「さすが弦一郎! お前たちホント頼りになるよ。なんだか燃えてくるな!」
なんと申しますか、
「花ちゃん!」
「まあ、光る君。ごきげんよう。来てくださって嬉しいわ」
お名前のごとく花の咲くような笑顔の花子さまでいらっしゃいます。
「俺も花ちゃんとディナーできて嬉しいよ。って夕も来てたの?」
「父さんこそ、僕が母さんのところに来るって聞いて飛んできたんじゃないの?」
光る君のご子息夕さまでございます。以前は花子さまと同じヴィレッジさまーにお住まいでしたが、今はご結婚なさりお屋敷を構えていらっしゃいます。
「なんのこと? 俺は逢いたいときに逢いに来るんだよ。自分の家だしね」
「僕だって母さんに逢いに来るんだよ。実家だしね」
「さあ、3人でいただきましょう」
花子さまをめぐる父子バトルはヴィレッジさまーの風物詩でございます。
「だからそんなに母さんにくっつくなよ」
「見たくないならお前が帰れば? 雲ちゃんつわりでツライんだろ?」
「食べ物の匂いがツライからここで食事してるんだよ。父さんこそいろいろ忙しいんじゃないの?」
本日も不毛な言い争いが続いております。
「殿、そろそろお時間が……」
遠慮がちに弦三郎が切り出します。
「ほら、母さんには僕がついてるから父さんは行った行った」
「くそぅ、今日はこれまでか。花ちゃん今度は夕のいない時に来るからね!」
「母さん、デザート食べよう。杏仁豆腐と東方美人茶だって」
「くそぅ」
文字通り後ろ髪を引かれる思いでヴィレッジさまーを後になされます。
本日の光る君の動向のおさらいでございます。
卯三刻(AM6:00) パレス六条にご帰還
未三刻(PM2:00) ヴィレッジうぃんたーにて姫子さまのお誕生日会
酉一刻(PM5:00) ヴィレッジおーたむにて秋子さまにご挨拶
酉三刻(PM6:00) ヴィレッジさまーにて花子さまと夕さまのディナーに乱入
そして今後のご予定がこちら。
戌一刻 ヴィレッジうぃんたーにて明子さまとカクテルタイム
亥一刻 バー朧月夜
時刻未定 満月儀式
今日中 紫子さまと牛車ドライブデート
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