第31話

 だらしなく歩く大人が二人。


 パンパンに中身が詰まった重たいゴミ袋を二つ持つのは思っているよりも大変だったから、怠そうに起きた秋穂に声をかけてゴミ捨てを助けてもらうことにした。助けてほしいと声を掛けた時、案の定嫌な顔をした。出会った当時なら絶対に見せない顔だった。


 そういう些細な変化に気付くと終わりの始まりを実感する。きっと秋穂も言わないだけで私の表情とかを見ながらそう感じているのだろう。でも私と同じように現状を変えることができずにあの部屋の中で燻っている。


 彼はある日突然ふわっといなくなってしまうかもしれない。子供のいない秋穂は身軽だ。縋れる存在を見つけたら行動に移すのは早いだろう。その時が来たら私は何を思うのか・・・。


 目線は下に落ちる。少し顔を上げれば夏の澄んだ青が目いっぱい広がっているというのに、私も秋穂も汚いアスファルトのグレーをずっと目の中に映し続けていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る