第27話

 私たちに安住の地などあるのだろうか・・・。裏切られることも貧しさを感じることもなく穏やかに生きられる場所など存在しているのだろうか。


 世界は広い。広いから自由だとは思えない。広いからこそ恐ろしい。


 そう考えると、歪な今の生活から飛び出すことを戸惑ってしまう。広い世界をあてもなく彷徨って行き倒れるか、唸りながら今の生活を続けるか。私たち母娘には悲惨な二つの選択肢しかなかった。自分がもっとしっかりした人間であれば選択肢は広がるのにと、悔しさにぐっと奥歯を噛み締めた。


 桃香が持つ小さなバケツに入った遊び道具がカタコトと音をたてている。その不規則に続く音を聞きながら後ろを振り返るとあの少女がこちらを見ていた。泣くでもなく笑うでもない、その表情のない顔を見たくなくて、私はさっと彼女から目を逸らした。

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