羽黒山発進基地に変形する

庄内地方鶴岡市、出羽高校退魔部に使われている廃寺。

「退魔部員全員をここへ招集してください!」

「はい!」

ミツハは残る部員を廃寺の本堂に集めるよう湯子に命じた。

湯子がスマートフォンのSNSで呼び出した残る退魔部員は、1年・長南ながなみ玲(16)と2年・かがみ千絵里ちえりの2人だった。

「ミツハ部長、あづばり集まりってなしたや?」

「部長、ただ今参りました!」

「山形県村山地方に羅刹夷が現れました。いよいよ我らが羽黒神子の出番です!」

やだおらなんてまぁ、怪獣だなんて!」

「という事はオナカマ様がかだっていた?」

「んだ!田村麻呂より賜ったメタルクベーラ三機をこの出羽三山神社の門前町より内陸部さ出撃さしぇるのすんさせるのよ!」

「いよいよおらがだの初仕事だなや!」

「部員は全員揃いました!」

「それでは皆さん、所定の位置に!」

「はい!」

ミツハが本堂内の仏像無き須弥壇の前に置かれた登高座に座り号令すると、ミツハ除く退魔部員5は外陣に1列学年順に黒刃・衣月・千絵里・玲・湯子と座布団を敷いて並び須弥壇に向かって正座した。

オン麼抳マニ鉢訥銘パドマメイウン!出羽高校退魔部、出動!」

ミツハが観音経を向机に置き、六字明王印で六字真言を唱えると、

ーグゴゴゴ

本堂一体に光が走り、揺れが走る。

その過程で部室の本堂は脇間・内陣・外陣全体が巨大なスクリーンが現れて埋め尽くされ、登高座一式にはタブレットが出現してデスクPCのような構造に変わり、“SFロボットアニメの司令室”へと変化した。

黒刃・衣月・湯子の座布団が須弥壇に向かってレールに乗ったように滑らかに移動すると、須弥壇の下部が開いて3人の身体が頭から放り投げられるように入ると、レールが付いた移動器に肩から装着される。

レールで降下中に出羽高校のセーラー服の制服から、入れ替わり機械的にロボットアームで紅花色の市松模様をあしらった摺衣すりごろも太多須嬉ふとだすき貝ノ緒かいのお括袴くくりばかま脚絆きゃはん・地下足袋と草鞋が着付けされ、“神の紐隠し”という炎に見立てて結ばれ、羽黒神子の神子装束姿となった。

ミツハも登高座の礼盤ごと地下に降下し、同じ順序で機械的に制服のセーラー服から神子装束に着付けされていった。

ミツハが座っていた礼盤跡には新たな礼盤が競り上がってきた。

千絵里は右の、玲は左の経机の前に座布団ごと移動され、経机にもタブレットが開き、2人のスマートフォンと接続された。

降下した4人のうち、黒刃とミツハは緑色のジェット旅客機エアバスA320の翼に二砲のキャノン砲が付いた「ハグロジェット」に、衣月は山形新幹線E3系2000番台車両にジェットブースターが付いた「ガッサンウィング」に、湯子は特急いなほ号E653系1000番台U104編成に双梯子ブースターが付いた「ユドノランチャー」に、それぞれ肩に付いていたレール移動器から外され、滑り込むようにマシンの操縦席に乗り込む。

操縦席には宝冠が置かれており、4人が宝冠を被ると各機内の機器が点灯し起動した。

「全機乗り込み、起動確認しました!」

「各機カタパルトゲートへ移動!」

「一の坂発進ゲートオープン!」

千絵里と玲がオペレーターとなって基地と化した廃寺地下から羽黒山へメタルクベーラマシン三機を移動させる。

ープァーンプァーン

ーゴゴゴゴ

羽黒山境内に警報音が鳴り響く。

羽黒山神路大橋にかかる祓川の崖から機械的に発進台が現れ、空に向かって滑走路が一直線に伸びた。

発進台にはハグロジェットがセットされた。

「二の坂発進ゲートオープン!」

二の坂茶屋の下の崖から同じく機械的にレール付き発射台が2台現れ伸びた。

こちらにはガッサンウイング・ユドノランチャーがセットされた。

「全機発進!!」

ーガチャ

玲の合図と共に三機のメタルクベーラの発進ギアを動かし、ハグロジェット・ガッサンウイング・ユドノランチャーは羽黒山より発進した!

Gの圧力に耐えながらも3人はメタルクベーラマシン三機を操縦し始め、離陸に成功した!

「発進、離陸に成功!」

「皆さん、羅刹夷の反応が村山盆地から最上地方へ移りました!新庄市方面に向かってください!」

「わがった!」

山形県防衛マシンの発進基地と化した羽黒山より三機の山形県防衛マシンが飛び立ち、内陸部最上地方へ向かった。

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