M04-06
「A01より本部へ。了解です」
神崎彩菜(かんざきあやな)のBMD-A01は海に沈んだ市街地のツインタワービルにはさまれた大型マンションの屋根の上で、『カイラギ』達を待ちかまえていた。後方には旧都市の建造物にぶつからないように進む『一特(いちとく)』の調査船があった。
透哉(とうや)と修(しゅう)が倒した4体を引くとまだ、戦士型が8体、12メートル級の未確認『カイラギ』1体が存在することになる。調査船が旧都市を抜けて最大船速で航行できるまでにまだ20分はかかる。BMD-T07とBMD-Z13がもどるまで10分弱。それまでは『カイラギ』の襲撃を一人でしのがねばならないのだ。
心臓が高まる緊張でドクドクと脈打つのがわかる。神崎彩菜はまだ一度も戦士型の『カイラギ』と剣を交えたことがなかった。久我透哉のBMD-T07と互角に戦った戦士型を8体も倒すのは、ランクA装備『ムラサメ』をもってしても不可能だった。さらに12メートル級の『カイラギ』の戦闘能力は未知数だ。
ドッバーン。ドーン。ドーン。ドーン。
右前方で火の手が上がる。『一特』の港と地上施設が次々と爆発する。地上班が『カイラギ』の襲撃に合わせて、ドローンを使ってリモートで爆破したのだ。
「本部より、A01へ。地上班より報告。戦士型4体が地上施設を襲撃。爆破攻撃による効果は軽微。調査船に向かったとのこと。AIによる予測では、まもなく先発部隊として戦士型3体、12メートル級1体がそちらを通過します。遅れて、地上施設を襲撃した4体が5分後、陽動に回った1体が8分後です」
「A01、了解。マンションに誘導します」
神崎彩菜が本部に報告を入れた直後、BMD-A01のゴーグルが戦士型3体、12メートル級1体の姿をとらえた。
「よしよし、いいこちゃん。こっちにきな」
4体の『カイラギ』はBMD-A01を見つけて、ビルの屋上から屋上へと飛び跳ねながら向かってくる。BMD-A01は『ムラサメ』を引き抜いて身がまえた。
キーン。
ランクA装備、独特の超音波振動音が辺りに響きわたる。4体の『カイラギ』が同時にBMD-A01のいるマンションの屋根に向かって跳躍した。空中で長剣を抜き四方から同時に襲いかかる。
「よし」
キイーン。
神崎彩菜は先に後方のビルに放っておいたBMD-A01のクナイのワイヤーを巻き取った。ワイヤーに引かれてBMD-A01の機体が宙を舞う。マンションの屋根を足がかりにBMD-A01を追おうと『カイラギ』達が着地した時、屋根が崩れた。『カイラギ』達は足場を失い、マンションの屋根から室内にめり込んだ。神崎彩菜はBMD-A01の『ムラサメ』を使って屋根に切れ込みを加えてもろくしていた。
ドーン。ドーン。
左右のツインタワービルの下層部で爆発がおこる。ビルは中央のマンションに向かって左右同時に倒れ、衝突した。崩壊による大量のガレキがマンションに降り注ぎ、山をつくっていく。数十メートルにも及ぶ水柱が吹き上がる。神崎彩菜のBMD-A01はワイヤーに引かれながらその光景を見つめた。
後方のビルに飛び移ると、吹き上がった水柱が雨となってBMD-A01の機体を濡らした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます