5-113 闇の世界12








それからサヤは、魔素の扱いの練習を始める。

魔素の扱いはサヤにとっては簡単なことで、粒子を集めて物質に変化させたりすることで直接この世界に干渉することが可能となった。

これでサヤは、どんな敵に襲われても対応できる術を身に付けた。

この能力は、この世界の通常の生物に対しては敵となる者はいなかった。

さらにサヤはその能力の使い方を覚え、流れ出ていた情報も止めることを覚えた。

だが、オスロガルムに対し不自然な点が無いように行い、怪しまれることはなかった。





力の使い方など渡してもよい情報とそうでないものを意図的に分けることができた







その自信を身に付けてからか、サヤはこの世界を渡り歩くことにした。

そのことをオスロガルムに告げると、その行動を大した問題にはしていなかった。

反対に、サヤの行動はオスロガルムにとっては嬉しいことだった。

一人でこの世界を見て回ろうとしているよりは、元いた世界でも単独で行動していたサヤの視点で見た方がこの世の情報を知ることができると判断したためだった。

勿論サヤも、見たものは全てオスロガルムと共有することを約束した。


全ての情報を遮断してしまえば、怪しまれるとの考えたからだった。



「それじゃあ、お互い何かあったら知らせ合うってことで……意識は共用できてるからすぐに連絡も取れるだろうしね。アンタのところに行くのは時間がかかるから、その辺は考慮してね。アタシはアンタみたいに飛べないんだから」





『……ならば、ワシのように分身を使えばよいのではないか?』




「あれ……ね。結構、魔素の消費が激しいのよね……。アタシはアンタみたいに、まだ魔素を効率よく溜めれないからさ。それに、もっと他の考えもあるんだ……同じ手先を増やす方法のね」




分身とは、魔素を物体化させてそこにある程度の指令を与えることによって半自律的に行動を行える存在を創り出すこと。

いつしかその存在は悪魔と名付けられ、その存在が与えられた知能のレベルに応じて名前が変わっていくことになる。

この方式を考えたのはサヤであったが、この他に別な考えを持っていた。

それは自分と同じように生体に魔素を与えることによって、自律した行動をとれる分身を創り出すということだった。


完全な魔素から創り出した物体は、大量の魔素を必要とする高度な知識を持つ上位種の悪魔でさえ、言葉は理解し会話はできるが自身の意思を持つことはできなかった。


しかしサヤの感が得た方式では、そうすることにより元の生体の感情や思考などの能力がそのまま引き継げることができるため、高度な魔素の能力を別な能力に回すことを考えていた。


そしてそれは成功し現実的な物となり、ヴァスティーユやヴェスティーユがこの世に誕生した。




『そうか……それとお前に聞きたいことがあるのだ』



「ん?……なに?」



『お前の組織を受け継いだ時にな、見えたものがあるのだが』



「みえた?……何が見えたって?」



『この世界が崩壊する様子がな……お前は何か知っているのか?』



その言葉に、サヤの目は大きく見開いた。








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