5-82 疑問3











「とにかく、今は魔神の襲撃に対してどのような準備をしていかなければならないか……だな」



「それについてですが、あの魔神はあの剣を探していたと記憶しております。……で、あれば一応は目的が達成されたものと考えてよいのではないでしょうか?」



サナがステイビルの独り言のような言葉に対して、自ら感じた意見を述べた。

サナの意見に対し、シュナイドも賛同の意を見せた。




「サナ様……でしたか?間違えておりましら申し訳ありません。その意見もひとつの可能性としてはありますが、やはり警戒は続けるべきではないかと思います。カギとなる剣の利用目的が明確ではありませんし、相手は西の王国をあのようにした存在です。まだ襲ってくる可能性があると考えた方がよいでしょう」




サナの意見を否定したカルディの言葉に、シュナイドは機嫌を悪くし低い声で唸りカルディのことを目だけを動かして捉える。

カルディはシュナイドがサナのことを気に入っている以上の繋がりを持っているのは、出会ってから今日までの数日の期間でその関係性が把握できていた。

同じメンバーでもないカルディが告げることによって、サナに好意を抱く火の大竜神の機嫌が悪くなることも判っていた。

ステイビルたちよりも早くシュナイドの加護を受けた時は、いまよりももっと凶暴だったがその脅威はおとなしくなった今でも変わっていない。



カルディはその視線に歯向かうこともなく、発言が敵意があるものではなく全体のために告げた内容であることを理解してもらえるまで頭を下げてじっと視線に耐えた。





「あの……シュナイド様。カルディ様は、別に間違ったことをおっしゃってませんし、私は意見を聞いていただいて検討をしていただければと思って発言したのでそんな風にしないでください」



『むっ!?……しかし、サナも少しショックを受けていたではないか。サナにそのような気持ちにさせた者に……』



「大丈夫です!……それは、悪意のある否定ではないにせよ、やっぱり良くない思いもありますけど。どちらもこの国を守るための考えですから……大丈夫です」



『……クハハハハ!シュナイドよ!良い性格になったなぁ!』



モイスに笑われたシュナイドは小さな声で”後で覚えておけよ!”といって長い身体と首を曲げて顔をそむけた。




「サナさん……申し訳ありません。そしてありがとうございました」


「いえいえ、いいんですよ!?私は正式な王選の人員ではありませんし、そ、それに、ど……ドワーフなので……」



「サナよ……私は大切な仲間だと思っている。ドワーフであってもエルフであっても、もちろんコボルトであっても。できることならばそれ以外の種族も含め、それぞれが手を取り合いそれぞれが共存できる世界を望んでいる。もちろんその中では意見が食い違うこともあるだろう。だが、その困難も乗り越えてともに歩んでいきたいと考えている」



「ステイビル様……」



「まぁ、我々の方が寿命が短いので人間がおかしなことをしてしまうこともあることは先に誤っておこう」



「その考え、ぜひあの村にも伝えておきます。ステイビル王子」



ブンデルもサナの隣で、そういってステイビルの考えに賛同の意を示した。

その様子を見て満足したのはグレイネスで、何度も頷いて見せてこの場を収める言葉を口にした。



「……うむ。とにかく今日はこれで一旦終いにしよう。オスロガルムの襲撃に警戒しつつ、様子を見ながら今後の方針を決めていく。よいな?」



「「はい!!」」



この場に参加した者たちがグレイネスの言葉に応答した。




そして食事をとり、王選の全メンバーがそろった二つのチームは久々にお互いの経験したことを語り合った。






――その夜



ハルナはベットの上で睡眠をとっていると、どこからともなく声が聞こえた。



『ナ……ハルナ……』








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る