5-63 カタナ
この刀はドワーフのジュンテイから託された”刀”という名のついた剣だ。
ハルナから聞いたところによると、刀はハルナが住んでいた国の古代の者が使用していた武器だったという。
主に武士という戦士が使用していたようで、アルベルトたちが使っている両刃の剣よりも細く弧を描いているせいか切ることに長けた武器であることが分かった。
刺突することも可能だが、アルベルトはこの刀で訓練をするときには切ることに特化した剣技を鍛えていた。
その中でも特に、訓練を重ねた技があった。
抜刀術ともいえる、その動きをアルベルトは繰り返し練習を重ねた。
この刀はいつも帯刀している王国うから支給されている剣よりも刀身が随分と長い。
そのため、刀を抜く動作だけでも手間取っていた。
初めは鞘と一緒に手に取り、鞘を抜いてから構える方法をとっていた。
しかし、それだと急な襲撃に対して反応ができないために帯刀している腰から、抜刀速度を上げることを繰り返し行った。
何百と繰り返された動作の中で、その抜刀の動作と攻撃を一緒に行えないかという考えが浮かびあがった。
そしてアルベルトは身体を半身に構え、刀を抜くと同時に刃を滑らせて対象物を切り裂いていく方法を思い付く。
アルベルトはその攻撃方法を持ち前の感性で、短期間のうちにその技を習得した。
この技を繰り返し練習をしていく中で、欠点ともいえるものも見えてきた。
それは、かなり対象物と接近していないとその攻撃範囲の中にはいらないということだった。
無警戒で相手が迂闊に踏み込んできた場合は、この世界にはないこの珍しい攻撃方法によってその餌食となってしまうだろう。
だが、この技の範囲は接近時にのみ発揮されるためかなりの距離を詰めなければならず、それは相手が襲い掛かってる刃の攻撃範囲にはいってしまうということに他ならない。
アルベルトが持つ刀は、通常の剣よりもほんの僅か刀身が長く作られているが、それでも敵を近くの寄せてしまうというリスクは変わりがない。
そのことが、この技の使いどころを狭めていた。
しかし、今は全てのタイミングがそろっていた。
黒い瘴気はを変え、アルベルトに襲い掛かってくる。
ステイビルは考えるよりも、刀が自分の手に触れた途端に自然と身体が動き出していた。
鞘から抜かれた刀は、その姿を見せる段階で既に獲物を捕らえている。
引き抜く動作がそのまま、相手を切りつける動作に直結しているこの技。
それによって黒い瘴気の渦は、刃が通り抜けた軌跡の通りに二つに分かれていった。
そして霧が空気に溶け込むように、瘴気の渦も切り口から消えていった。
一瞬の出来事であり、危険を感じた瞬間にすでにことが済んでいた。
ハルナもエレーナも、黒い瘴気が消えていく中でアルベルトの無事を確認した。
「アルベルトさん!?」
「大丈夫なの!?アル!?」
「あぁ、大丈夫だ。何ともない」
そういうと、アルベルトは一度だけ刀を下に穢れを振り払い鞘に刀を収めた。
「それよりも、その剣……いや刀だったか?その攻撃は飲み込まれなかったな……と、それよりもまずカステオを安全な場所へ移動させよう」
こうしてハルナたちは一旦この場所を離れ、城内の広い場所へと移動した。
王都内にいた他の者たちも、オスロガルムが戻っていったあとに他の魔物たちも消えていったという。
無事だった町民たちを城内に集め、ステイビルたちは傷を負った者たちをできる限り処置をするように命じた。
そして、子供連れや一部の住民はマギーの宿まで避難させることにした。
その夜、ステイビルたちは集まり今日起きた出来事を話し合う場を設ける。
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