5-55 進軍





「カステオ王子!お逃げください!もうそこまで魔物の大群が……!?」



「どこへ逃げるというのだ!お前たちを……民を置いて私だけ逃げることなどありえん!!」



カステオはフルプレートを纏い、手には剣をと盾を持って城に入り込んだ魔物に切り付ける。

喰らった魔物は黒い霧となり消えていくが、次から次へと訪れる魔物の数にどこまで抗いきれるか不安になっていた頃だった。

だが一つ楽なのは、魔物が数が増える前に妹のニーナを場外へ逃がせたことだった。


緊急避難用に、城からディバイド山脈へと続く抜け道は用意してあった。

ただ山の中に入ってからは、そこから先は自力で逃げる必要がある。

そのため、側近を数名ニーナに付けてその身を守るようにお願いをした。

そして、東の王国へ逃げてもらえればあの王子たちに何とか守ってもらえるだろうとカステオは考えていた。

できれば、それまでは持ち堪えたいという気持ちもあるが、それよりもいまは自分の国を守ることを考えるのが先決だった。


だが、そろそろ限界にきていた。

対策を考える前に、魔物が侵入してくる数が増えてきた。

城の中でこのような状態のため、外の状況は考えたくもない。

そのことに気を使っているのか、それとも場内の抗戦でそれどころではないのかわからないが、カステオの元に外の情報は入ってはこなかった。





「――ぐわぁ!!」



カステオがいる通路の向こう側で、通路を警護していた兵が倒れる。

その後ろから数体の魔物が、曲がり角から姿を現す。


カステオは剣を握り直し、盾を構えて魔物の襲撃に備える。



(フェルノール……私に力を!!)



カステオは心の中で、信頼していた女性の名を呼び力を込める。



「こい!!俺の国をお前たちの好きにはさせん!!!」














「……よし。それでは、これから西の王都への進軍を開始する!!」




「「はい!」」





東の王国から一晩で、百名に近い兵士と精霊使いが、ディバイド山脈の麓に集まった。


ステイビルたちは、この東の王国から集まった兵力を纏めて再び王都へと目指す。

その戦力は騎士団と警備兵を四十名、王宮精霊使いを二十名からなる戦力を十名と五名ずつに分けて編成した。

うまく王都内へと侵入できた際に、それぞれに町の中を捜索してもらうことにした。



残りはこの拠点を守るために残ってもらう。

それは最後の方にやってきた者たちであり、身体を休めてもらう意味もあった。



前回は宿を守ってもらっていたブンデルとサナ、それとボーキンとエルメトにも今回は加わってもらった。

ステイビルたちは、王都に入り万全な布陣でカステオの元へ向かうことにした。


それとは別に、ステイビルはコボルトにもお願いをしていた。

その内容は、キャスメルたちを探してきてほしいと告げた。

もし、西の国を襲った者たちが大物であった場合、ステイビルたちだけでは対処できない場合も考えてのことだった。

キャスメルたちには、兄が付いているということだったので、すぐにでも捜索する者を手配すると約束をしてくれた。


ステイビルは父であるグレイネスから預かったという盾を背中に背負った。

そして、ステイビルたちはゆっくりと足を踏み出していく。

馬はないため、全て徒歩で歩いて行かなければならない。

だが、それよりもカステオや町のことが心配だった。そう思うと、ステイビルの足は自然と早くなる。

先行するステイビルはハルナに声を掛けられて、自分が焦っていることに気付く。




今回の進行は、前回よりもさらに王都に容易に近付くことができた。







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